<J1:徳島0-1広島>◇第22節◇30日◇鳴門大塚

 日本代表に初選出された若武者がゴールを決めた。広島FW皆川佑介(22)はプロ初のPKキッカーを志願して決勝点を挙げた。

 皆川は、主審に敵味方が集まる横で、ススッとボールをセットした。前半32分のPK。ルーキーFWは周囲に「蹴りにいってもいいですか」。28日に日本代表にサプライズ選出された22歳はプロ初のPKを直訴して右足でゴール右へ。1-0の勝利を呼ぶ決勝点に「気持ちよくネットを揺らしました。雰囲気もあって今日の流れはオレだろと。先輩からの『代表にいってもプレッシャーに負けるな』と言う意味もあって蹴らしてもらいました」と、さわやかに話した。

 だが、ボールをセットした時にスタンドのチーム関係者は「え、マジで」と絶句。FK自慢の塩谷は「蹴りたかったな…。皆川さんには勝てませんよお」。遠征前は新人としてバスにチームの荷物を運ぶ謙虚な22歳だが、ピッチ上では肝が太い。

 中大から加入し、まだ年俸480万円以下のC契約。スピード型FW佐藤らと異なる186センチの長身FWだ。織田強化部長は「ウチで本格的なポストプレーヤーは高木琢也(現J2長崎監督)以来」。カズ、ラモスらとの「オフトジャパン」で90年代を沸かせた「アジアの大砲」の後継者が約20年の時を超えて現れた。

 担当の足立スカウトは言う。「高校2年でデカいFWがいるなと思った」。皆川がいた前橋育英は、09年全国高校サッカー選手権準決勝で大迫(現ケルン)の鹿児島城西に敗北。大会10得点と「半端ない」活躍を見せた大迫の陰で皆川に注目。高校途中までMFという足元の技術も評価して、5年以上マークして口説いた。

 一躍シンデレラボーイ候補となった新人FW。ただ代表でのPKについては「僕は気が弱いんで。1分でも長く試合にからめればいい」といたずらっぽく笑った。【益田一弘】

 ◆皆川祐介(みながわ・ゆうすけ)1991年(平3)10月9日、東京都生まれ。幼稚園でサッカーを始める。前橋育英高から中大。今春に広島入り。7月19日大宮戦でデビューし、同23日柏戦で初ゴール。J1通算8試合(328分)3得点。好きな食べ物はフルーツ。186センチ、84キロ。