<J2:岐阜1-1札幌>◇第31節◇14日◇長良川

 新監督初戦はドロー。J2札幌は、岐阜に引き分けた。前半に先制され、後半25分にDFパウロン(24)が退場し劣勢となったが、同42分にFW内村圭宏(30)のゴールで追いついた。バルバリッチ監督(52)は初采配を勝利で飾れなかったが、数的不利の中、システムを巧みに組み替え、勝ち点1を拾った。勝ち点を42に伸ばすも、順位は12位と変わらなかった。

 バルバリッチ流“やりくり”で何とか勝ち点1を取った。白いワイシャツ姿で、指揮を執った指揮官は、1-1ドローで終了すると、表情を変えず黒縁の眼鏡を外し、コーチ陣と握手を交わした。クラブのJ250勝はお預けも「私たちは1試合1試合勝つためにやっているが、今日に関しては内容、展開からいって勝ち点1は最低限のことができたと思っている。満足している」と振り返った。

 初戦から、いきなり難しい試合展開となった。まずは前半ロスタイム、DFパウロンがクリアしきれず、こぼれ球をつながれて失点。パウロンは後半25分に、2度目の警告を受け退場となった。1点ビハインドの中、数的不利に陥るという最悪の展開だった。

 先制され、チャンスもつくれない中、退場者も出た。そこで指揮官は、意外な策に出た。試合前は「最初の試合は、大きく形は変えないで状況を見極めながら変えていく」と、先発10人を固定。システムも4-2-3-1でスタートしたが、緊急事態の中、右サイドバックの上原慎を、1度も練習をしたことがないセンターバックに移し、形は4-3-2の変則システムに組み替えた。

 同29分にDF日高を右サイドバックとして投入。起用の理由について「元気な選手を前に絡ませることで、追いつく可能性が増えると考えた」と説明した。同42分、その日高の右FKを、DF上原慎が頭で折り返し、最後は途中出場の内村が押し込んだ。途中出場2選手と、初体験のポジションを任されたDF上原慎の3選手が絡み、残り3分で同点に追いついた。

 「今後も、こういうことは常にありうるということ。柔軟にこなせるようにしていきたい」とDF上原慎。初指導から6日目の初采配。本格的なイズム浸透はこれから。バル流「想定外」采配でつかんだ初陣での勝ち点1を、次戦の勝利につなげる。【永野高輔】