J2札幌が、元日本代表MF稲本潤一(35=川崎F)の獲得に成功した。福岡もオファーを出していたが、19日に稲本本人から札幌入りの決断を伝えられた。今日20日、クラブから正式発表される。日本代表として02年日韓大会からW杯3大会連続出場のベテランは、同学年の元日本代表MF小野伸二(35)とともにチームのJ1昇格を目指すことになる。札幌にW杯出場経験がある選手が加わるのはFW中山、小野に続き3人目。

 19日午後4時49分だった。稲本は野々村社長への52秒間の電話で、札幌入りの意気込みをシンプルに伝えてきた。「(オファー)ありがとうございます。ノリノリです!」。札幌は1年契約、年俸1300万円(推定)のオファーを出し、その後微増。福岡は同2400万円前後(同)と、最初は倍額近い条件を提示していたが、稲本は金銭面よりも、札幌の熱意と、北の大地での挑戦に、やりがいを見いだした。

 札幌には公私ともに親交がある元日本代表MF小野という大きな存在があった。「小野と一緒にやってみたい」という思いも、ファイナルアンサーを導く要因となった。

 今季、川崎Fでは先発3試合と出番が減ったが、野々村社長は「激しさと強さ。前への推進力は十分、みせられると思う」と、みている。今季、川崎FではDFに登録変更しており、札幌では本職のボランチだけでなく、DFとしての期待も大きい。

 バルバリッチ監督は来季3-5-2をベース布陣として構想中。3バックの中央は河合が最有力も、左アキレスけん痛などで今季終盤は試合に絡めなかった。来季は河合と稲本を生かしながら、シーズン通してチームを背後からコントロールできる。稲本の1ボランチに、小野トップ下という元日本代表コンビでの、分厚い中盤構成も可能だ。多彩な布陣を用いる指揮官にとって、戦術の化学反応を起こす、貴重な1ピースになる。

 野々村社長が今季最終戦だった11月23日磐田戦で、札幌ドームの観客1万9634人の前でオファーを“サプライズ公表”してから26日。来季の貴重な新戦力が決まったことを受け、あらためて「SNSなどでの『北海道に来てほしい』というサポーターの声が、本人にも伝わったはず。みなさんのおかげ」と感謝した。

 入団会見は稲本との日程調整がつき次第、早ければ年内に行う。野々村社長は「小さなクラブが大きくなるには、稲本選手のような本物を見て若い選手が育っていくことが必要」と言った。荒野、中原ら成長著しい若手、小野、稲本ら世界を知るベテラン、11年昇格経験者の河合、内村、さらにナザリト、ニウド、パウロンと伸びしろある助っ人を競わせ、J1定着への力を蓄えていく。【永野高輔】

 ◆稲本潤一(いなもと・じゅんいち)1979年(昭54)9月18日、鹿児島県姶良郡粟野町(現湧水町)生まれ。G大阪ユースで頭角を現し、G大阪でプロデビュー。運動量のあるボランチとして活躍し、今季は川崎FでDF登録。181センチ、75キロ。血液型O。12年にモデル田中美保と結婚した。

 ◆代表歴

 各世代で日本代表入りし、99年U-20W杯では小野、播戸らとともに準優勝を果たす。00年シドニー五輪8強。W杯は02年日韓、06年ドイツ、10年南アフリカ大会と3大会連続で出場した。

 ◆海外経験

 G大阪から01年にイングランドのアーセナルに移籍。01-02年シーズンはカップ戦のみの出場も、プレミアリーグ優勝を経験。その後、02年フルハムで同リーグ日本人初出場。ウェールズのカーディフなどを経て、06年トルコ・ガラタサライ、07年からドイツのフランクフルト、09年はフランスのレンヌと、欧州5カ国でプレー。