身も心も家族も北海道に根を張って、J1昇格に貢献する-。J2札幌に新加入する元日本代表MF稲本潤一(35)が16日、札幌市内で、一般公開での入団会見に臨んだ。移籍に伴い、夫人で女優兼モデルの田中美保(32)も札幌に移り住む。W杯経験者ではFW中山、MF小野ともに単身赴任での新天地挑戦だったが、稲本は“ラブパワー”も武器に、北海道を盛り上げる。

 ステージ前から、3階テラスまで、会見場をサポーターがぎっしりと埋め尽くした。立ち見を含む1500人の視線に、稲本の気持ちが、一気に高ぶった。「正直、これだけ人が集まってくれるとは思っていなかったから驚いています。その分、期待に応えられるようなプレーをして、持っている力をすべて出して、J1に上がれるように頑張ります」。イナ=17番のユニホームに身を包むと、観衆から早くも「イナモト~」と歓声が飛び交った。

 大阪で育ち、欧州5カ国へと飛躍し、昨季まで川崎Fでプレーした男が、今季から名実ともに“ホーム”を北海道に移す。野々村社長から家族と同居するか問われると、少し照れながら答えた。「嫁も一緒に来ます。意外に嫁の方が人気があるので。嫁ともども、よろしくお願いします」。12年まで在籍したFW中山、昨夏加入したMF小野は、子供の学校などの関係で、単身赴任で札幌に移り住んでいる。稲本も、女優の田中美保が都内で仕事を抱えるが、あえて家族そろっての札幌移住を決意した。

 愛の力でホーム全勝を目指す。札幌ドームは、01年7月1日キリン杯パラグアイ戦にボランチとして先発し、フル出場。MF小野とともに2-0勝利に貢献し、こけら落としを飾った。「すごく覚えている。フルでお客さんが入ると素晴らしい雰囲気。まず、ここ(会見場)にいる人たち全員来てもらって、もし、来てもらえるならもっと頑張って、フルで観客を呼べるようにしたい」。ドームでは、公式戦通算2戦2勝と験はいい。「(札幌でも)勝ち点3を取り続けたい。ホーム開幕戦でもチャンスがあればゴールを狙いたい」と意気込んだ。

 正式オファーを受ける直前、小野から「すごくいいチーム。サッカーもイナに合う。そんなにお金はないけど志が高いチームだよ」と伝えられたことも明かした。既に35歳。条件面で高かった福岡のオファーを断り、小野がいる札幌を選んだのには、それだけの価値を見いだしたから。「彼は本当に人を喜ばせるプレーをする。そのプレーを支えたい」。天才小野のプレーを引き出し、なおかつ経験を若手に伝授する。家族と住む新天地札幌での使命に、稲本の魂は熱く、燃えたぎっている。【永野高輔】