仙台が20日、15年シーズンに向け始動した。クラブハウスで約30分のミーティング後、11年の東日本大震災で甚大な津波被害を受けた名取市の閖上(ゆりあげ)地区を慰問。渡辺晋監督(41)の強い意向を受け、初めてチーム始動日に被災地を訪れた。現状を理解し、心に焼き付けた選手たちは「何としてもタイトルを取り、宮城を盛り上げる」と青空の下であらためて誓った。

 渡辺監督の強い決意の表れだった。湊神社のある日和山に登り、真剣な表情で高台から眼下に広がる閖上の町を360度見渡した。「我々がサッカーをするこの宮城に、閖上に何が起こったか理解してほしい。感じたことを失わずにいてほしい」。新たなシーズンを戦うために全体練習よりも先に優先させて行った。

 3年と10カ月前。ホーム開幕戦前日に起きた震災、そしてそれからの月日はあっという間に経過した。それでも、コーチだった当時掲げた「復興のシンボルになること、サッカーをやっていいのかと悩んだ時期」は忘れていない。あの時感じた思いや未来を「薄れないようにしたい。何年たっても何も変わらない」ということを再確認しに訪れた。この日はMF梁、DF石川直、MF西村を除く25選手とクラブスタッフも合わせ計39人が参加した。祈りをささげ、気持ちを引き締めた。

 今季はクラブ史上最大人数の選手が入れ替わった。13人が去り12選手が加入。鎌田や富田ら当時を知る選手も減り、現地に初めて足を踏み入れる選手もいる。隣県山形出身のDF渡部は「幼いころから宮城や岩手でもサッカーをさせてもらってきたので僕が育った土地でもある」と話し、「使命を持って試合に臨み、タイトルやチャンピオンを目指すことで宮城を盛り上げたい」とあらためて誓った。

 この日が誕生日で最年長の34歳になったMF村上は選手を代表して献花を行った。11年は大宮所属だったが大宮駅前で募金活動も行った。仙台通算7年目のベテランは「再び仙台で選手としてプレーできる幸せを感じ、責任を強く全力で気持ちを込めてやる」と話した。気持ちを1つにしたベガルタはきょう、全体練習を開始する。【成田光季】

 ◆仙台と被災地メモ

 11年3月11日の震災直後は昨季限りで引退したFW柳沢主将らが個人的に自治体にボランティア登録をし、子どもたちとサッカーを行った。チームとしては同28日、石巻市を訪れ避難所を回ったのが最初で、14年3月11日にも仙台市荒浜地区を慰問。そのほか選手個人では11年当時、炊き出しや避難所訪問など数多くのボランティアをし、その後も慈善試合やサッカー教室などに参加する選手は多数。