現在、海外で最も活躍している日本人サッカー選手といえば、香川でも本田でもなく、米女子プロリーグNWSLシアトル・レインでプレーするなでしこジャパンFW川澄奈穂美(28)だろう。

 6日には日本から駆け付けた母親が見守る中、ホームのヒューストン戦で2ゴール1アシストと大活躍。前半31分にDFライン裏へ抜け出して右足で先制ゴールを決めると、34分にもGKの頭越しに華麗な右足ループシュート。INAC神戸でチームメートだったFWゴーベルの得点もアシストし、この試合のマン・オブ・ザ・マッチ(ウーマン・オブ・ザ・マッチ?)にも選出された。

 今季これで18試合に出場し、リーグ5位の9得点。チーム内でもリーグ得点王のリトル(15点)に次ぐ2位という堂々たる成績だ。リトルはPKで6点を決めているため、プレーの中のゴール数では川澄はリトルに並んでいる。

 ハービー監督の信頼も絶大で、同監督は地元メディアとのインタビューで「ナホは本当に一流。開幕当初は良さを出させるために多少時間が必要だったけど、ここ1カ月以上は素晴らしいプレーを見せてくれている」と、川澄を絶賛。リトルも「彼女がボールを持てば何かしてくれるし、ゴールも決めてくれる」と話している。

 男女を問わず、海外のクラブと契約できるような選手たちはみな一様に高い技術を持っている。それでは彼ら、彼女たちが実際に活躍できるかどうかのカギは何なのだろうか。私は、現地での生活に溶け込めるかどうかが大きなポイントだと考える。ストレスなく暮らし、チームメートと良好な関係を築けば、周囲も助けてくれる。この好循環が結果になって表れる。

 かつて約10年取材した大リーグでも、成功するのは環境に適応できた選手ばかりだった。日本人スタッフとばかりつるみ、スタジアム外でチームメートと付き合えないようでは、仲間からのリスペクトは得られない。

 その点、川澄には今後も期待が持てる。彼女のブログには、毎日のように「チームメートと食事にでかけた」等のエピソードがつづられ、米国生活を謳歌(おうか)している様子がうかがえる。自慢の料理を仲間に振る舞うなんて、男性選手にはなかなかできないことだ。仲間から愛され、楽しくプレーし、米国でさらなる成長を遂げてなでしこジャパンに還元して欲しい。