今夏、武藤嘉紀のマインツから内田篤人が所属するシャルケへと移籍した、スポーツディレクターのクリスティアン・ハイデル氏が、ホルスト・ヘルト前SDが選手に課していた“デュッセルドルフ居住禁止令”を解除した。

 ヘルト前SDは昨年5月以降の新加入選手との契約に「スタジアムやクラブハウスなど、メインとなる施設から30km圏内に住まなければならない」という付帯条項を盛り込んでいた。

 大衆紙「ビルト」によれば、ヘルトSDをはじめ、当時はトップチーム所属27選手のうち、実に11人が、ノルトライン=ウェストファーレン州の州都であり、ゲルゼンキルヘンから60km離れているデュッセルドルフに居を構えていたという。しかしファンの多くから「シャルケ(もしくはゲルゼンキルヘン)の近くに住まない選手が、シャルケにアイデンティティーを見い出せるわけがない」という批判が噴出したため、ヘルトSDは“居住地の制限”という策に出たのだ。

 ところが、この夏シャルケに赴任したハイデルSDは、これを撤廃。ウォルフスブルクからやって来たナウドはデュッセルドルフに住み始め、またパリサンジェルマンからの新加入選手ベンジャミン・スタンブリも、同じくデュッセルドルフに家を持つことを考えているという。

 同SDは制限解除の理由について、専門誌「スポーツビルト」にこう話している。

 「我々も選手たちも、もう大人なんだ。例えばナウドには家族がいて、彼は子どもをインターナショナル・スクールに通わせなければならないため、デュッセルドルフに住んでいる。そのような論理的な理由があれば、何も問題はない。選手が満足のいく環境で生活できることこそ、大事なんだ」

 ビルト紙によれば、もちろんハイデルSDも基本的には、「クラブ施設に近いところに住むことが望ましい」と考えており、自身は10km離れたエッセンに住んでいる。また人口約50万人と、ドイツでは比較的規模の大きな都市であるデュッセルドルフには、夜遊びへの誘惑もある。ただし、それらの点に関して、同SDはまったく心配していない。

 「先日、ドニス・アブディジャイが交通事故を起こしてしまったが、それは例外。私がシャルケに来てからというもの、規律を守らないような選手はまだ1人も見ていない。彼らは内面も非常に素晴らしく、シャルケというクラブにしっかりとアイデンティティーを見出している」

 序盤こそ低迷したものの、徐々に勝ち星を増やしつつある今季のシャルケ。このまま上昇気流に乗っていくことができれば、クラブへのアインデンティティーと居住地を結びつけるといった、ある種の理不尽な(?)批判がファンから出てくることはなくなるだろう。