首位レスターの日本代表FW岡崎慎司(29)が、ホームのニューカッスル戦で芸術的なオーバーヘッド弾を決めた。前半25分に相棒バーディーが頭でつないだボールをアクロバティックに振り抜いた。岡崎の8戦ぶり今季5点目でチームは1-0と勝利。2位トットナムとの勝ち点差5をがっちりキープした。残りは8試合。開幕前は降格候補の歴史的な初制覇が見えてきた。

 会心のゴールを決めると、無我夢中で走った。前半25分。MFマレズが右サイドからゴール前へFKを放り込む。味方がこぼれ球をつなぎ、最後はバーディーが頭で折り返したボールを岡崎が迷うことなくオーバーヘッドで蹴り込んだ。

 ガッツポーズを繰り出し、脱兎(だっと)のごとく走り回る岡崎のもとに、歓喜のチームメートが集まった。今季5点目は値千金の決勝弾で本拠地初得点。「忘れられないゴールになるでしょうね」。ブンデスリーガ時代も含め、2度目だというオーバーヘッド弾に「すげーって50回くらい見返すと思います」と笑った。これで2位との勝ち点5差をキープ。残りは8試合で、初優勝へまた1歩近づいた。

 岡崎は今季ここまで献身的な守備や、味方にスペースを作る動きなどでも貢献してきた。ラニエリ監督も「彼がゴールを決めたから重要なわけではない。シンジはチームの一部で、いつも一生懸命プレーする。今日は得点を決めて素晴らしいが、彼はシーズンを通して素晴らしい動きを見せてくれている」と評価している。だからこそ、ゴールがなくても先発起用を続けてきた。

 ただその評価に甘えることはできない。FWに一番必要なのがゴールだということも分かっている。この日は「風邪でめっちゃしんどかったけど、点を取ろうと思ってたんで(監督に)内緒にしていたんです」と強行出場。8戦ぶりの得点で自身の価値を証明した。

 11日にはブログに「東日本大震災から5年が経ちましたが、自分が出来る事なんて本当に微力だと思い知らされる。だけど、だからこそ全力で復興を願い、そして自分も出来る限りの行動を起こしたい」と記した。夢ではなくなってきたプレミア初優勝へ。岡崎の躍動が日本を元気づける。

 ◆レスター 1884年創設。07-08年に2部22位となり降格。翌年3部優勝し、1シーズンで2部復帰。13-14年に2部優勝。03-04年以来のプレミア昇格を決めた。10~12年に浦和MF阿部が在籍。本拠地キング・パワースタジアム(3万2500人収容)。

<レスター強さの秘密>

 ▼ラニエリ監督 チェルシーやユベントスなどを率いてきたイタリア人指揮官は1部優勝経験なしで「終わった監督」だと思われていた。だが失点ゼロをたたえて選手にピザをおごったり、リフレッシュ旅行を許可するなどアメとムチで士気を高めてきた。

 ▼得点王 岡崎とコンビを組むFWバーディーは今季ここまで19点を挙げ、得点王争いでトップタイ。8部クラブでプロデビューした苦労人だが、驚異的なスピードを武器にイングランド代表にまで上り詰めた。

 ▼チーム編成 バーディーやMFマレズ、MFカンテら主力の獲得に尽力し、今季の快進撃の礎を築いたのがスティーブ・ウォルシュ助監督。確かなスカウティング能力で、低予算でチームを強化した。

 ▼富豪オーナー タイ人のスリバダナプラバ・オーナーは空港やモールで幅広く免税店を展開する企業のCEO。レスターが優勝した際にはラスベガスで豪華パーティーを開催すると、ニンジン作戦を掲げている。