<2002年9月16日付日刊スポーツ紙面から>

 レジーナMF中村俊輔(24)が開幕戦で、セリエAの厳しい洗礼を受けた。トップ下の司令塔として先発フル出場したが、開始からペルージャのハードなマークに苦戦。精度の高い左CKから2度決定機をつくり、自らも計3本のシュートを放ったが得点にはならなかった。試合も後半2失点を喫し、0-2と完敗した。

 中村は、仲間とイメージが一致しなかった。相手のプレッシャーが甘くなった後半、中村はラストパスを出し、同14分には右ポストをかすめるシュートも放った。が、ゴールは遠かった。逆に6分、35分とペルージャにゴールネットを揺らされた。1点目は中村が右サイドでボールを奪われ、一気にカウンターを決められた。プレシーズン、イタリア杯予選と11試合で3得点3アシスト。無敗で乗り切ったが、セリエAはやはり厳しかった。90分で、チーム最多のシュート3本を放った。CKも4本を蹴ったが、デビュー戦ゴールも遠かった。

 前半には、セットプレーで持ち味を出した。左CK。中村が左足を大きく振った軌道は前半6分、24分とDFピエリーニの頭をピンポイントでとらえた。特に2本目のシュートはゴール右隅のポストに当たり、ゴールラインを越す直前でGKに阻止された。「あっ」。中村は天を仰ぎ、ムッティ監督は頭を抱えた。

 同32分には、21メートルのFKで直接ゴールを狙った。理想に近い軌道だったが、ジャンプしたペルージャのエースFWブリザスの顔面にヒット。敵地のスタジアムでブーイングを浴びたが、確実にダメージを与えた。

 しかし、流れの中のプレーでは自由を奪われた。前を向かせてくれない。開始1分、ボールを受けるといきなりタックルをくらった。苦笑いした。「これがセリエAか…」。ワンタッチでさばくが、うまく前につながらない。ハードマークが身上のペルージャ守備陣に、持ち味を消される時間が続いた。

 もっとも、中村はこの状況を待ち望んでいた。「厳しい中で戦って、もっとうまくなりたい」。ただそれだけのために海を渡った。デビューの相手とは因縁もあった。2年前から3度にわたってラブコールを送ってくれたクラブ。前日、コスミ監督が「イタリアで私とアレサンドロ(社長)ほど、中村を知っている人間はいない。10本以上のビデオを見たからね」と話すほど、研究されていた。

 デビューのスタジアム「レナトクーリ」は、4年前の9月13日、当時ペルージャの中田英寿がユベントスを相手に2ゴールした、あの場所でもある。「お願いだから比較しないで」と話すが「前にいくドリブルとか、判断の速さとかは吸収したい」と先輩の優れたプレーを参考にしてきた。そして同じセリエAという舞台に立った今、だれにも負けない結果を残すことを誓いながら、長いシーズンのスタートを切った。

 [2009年8月31日3時16分]ソーシャルブックマーク