<コンフェデ杯:ブラジル3-2米国>◇28日(日本時間29日)◇決勝◇南アフリカ・ヨハネスブルク

 【エリス・マシャカ通信員】「ドゥンガ・イズム」で世界一をつかんだ。ブラジルが米国に3-2で逆転勝ちし、2大会連続3度目の優勝をつかんだ。2点リードされた後半にFWルイス・ファビアーノ(28)の2ゴールで同点とし、39分に右CKからDFルシオ(31)がヘディングで決勝点を挙げた。南米、アフリカ大陸をまたにかけ、23日間で7試合の超ハード日程。疲労はピークだったが、精神力でタイトルを手にした。大会最優秀選手にはMFカカ(27)、得点王はルイス・ファビアーノが5ゴールで獲得した。

 重圧から開放された選手は、試合後のピッチで感情を爆発させた。厳格な主将ルシオは人目もはばからず涙を流し、お祭り好きのロビーニョは太鼓をたたいて踊った。得点王トロフィーを手にしたルイス・ファビアーノは誇らしげな笑みを浮かべ、MVPのカカは表情を引き締め、花火の打ち上がった夜空を見上げた。2点差をひっくり返しての「横綱相撲」は、ブラジルの結束力を証明した。

 まさかの展開だった。「無敵艦隊」スペインを沈めた米国のカウンターを浴び、前半で2点を失った。どよめく会場。波乱ムードが漂う中でも、気持ちは折れなかった。ルシオが言う。「我々は逆転する、という強い信念を持って後半のピッチに立った。そこがこのチームの長所だ。最後まであきらめず、戦い続ける心身の強さを持っているからね」。闘将と呼ばれたドゥンガ監督の魂を受け継ぐ男たちは、後半に発奮した。

 ルイス・ファビアーノが反撃の口火を切った。鋭い反転から開始40秒で得点を挙げ、29分にはクロスバーからの跳ね返りを頭で押し込んだ。勢いに乗るチームは39分、CKからルシオのヘディングシュートで勝ち越しに成功。代表32試合22得点のルイス・ファビアーノは「ゴールこそ僕の人生の役目。チームの勝利につながれば、それ以上の喜びはない」と言い切った。

 6月6日のウルグアイ戦(アウェー)から23日間で7試合。疲労はピークで、冬の南アでカカ、ルイス・ファビアーノら主力選手が体調不良を訴えた。それでもピッチに入れば泣き言はなし。苦境で底力を発揮できるたくましさこそ、このチーム最大の持ち味だ。

 ドゥンガ監督は「このチームはモチベーションとプロ意識が高い。0-2から逆転するのは困難だが、こういう状況に備え、体力面も強化してきた」とうれしそうだ。ロナウジーニョ、ロナウド、アドリアーノら個性豊かなスター選手はいないが、攻守に献身的なプレーは光る。「ドゥンガ・イズム」の浸透で16試合連続不敗も記録。1年後の本番を前に、ブラジルが王国のプライドを取り戻した。

 [2009年6月30日8時21分

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