全日本実業団対抗女子駅伝は16日、宮城県松島町中央公民館前をスタートし仙台市陸上競技場までの6区間、42・195キロに29チームが参加して行われる。宮城県開催となって2年目。今年からクイーンズ駅伝in宮城という愛称で呼ばれることになった。

 ロンドン五輪陸上長距離代表の新谷仁美(24)を軸に初優勝を狙うユニバーサルエンターテインメントと、連覇を狙う第一生命が2強を構成する。福士加代子(30)のワコール、吉川美香(28)のパナソニック、木崎良子(27)のダイハツら、ロンドン五輪代表が率いるチームが上位を争う。

 ユニバーサルエンターテインメントがV候補本命に推される最大の理由は新谷の存在だ。ロンドン五輪1万メートルで9位。11月の東日本予選は区間2位の選手に2分5秒差をつける驚異的な走りを見せた。

 東日本レース後は「どこで“モテ期”が来るかわかりません。少しでも長く“いい顔”でテレビに映りたかった」と新谷節が全開。しかし、直後には「今日の走りでは“トラックの女王”福士(加代子・ワコール)さんの前には立てません。もっと練習しないと」と表情を一変させた。

 新谷の競技に対する姿勢は生半可ではない。高橋尚子らを育てた小出義雄氏(73)の指導に反発し、チームとは別の練習を行うことも多い。その代わり「プロは結果が全て」を有言実行する。

 チームの支柱となっているのは33歳の那須川瑞穂だ。かつては駅伝の短い区間で3度の区間賞。マラソン進出で苦しんだが、11月の横浜国際女子マラソンで2位(日本人1位)となり、来年の世界陸上有力候補に躍り出た。

 今季は日常生活を食事から見直し、苦手だった40キロ走を繰り返した。その姿を見た若手の青山瑠衣(23)や中村萌乃(22)が伸びているのも、本命に推される理由である。

 小出氏が新谷流の練習を認め、那須川も「チームの刺激になっている。頼りになる後輩」と立てる。突出した力を持つ新谷と、地道に力を付けた那須川らが融合し、“駅伝力”が飛躍的に上がった。

 「手にしたいのは優勝だけ」と新谷がプロの顔で言えば、「優勝が夢から、“勝ちに行くぞ”という対象に変わった」と、那須川がリーダーの顔で応じた。