<福岡国際マラソン>◇5日◇平和台陸上競技場発着

 箱根駅伝で活躍した「山の神」今井正人(26=トヨタ自動車九州)が世界と戦える才能を証明した。15キロすぎからの海外強豪のペースアップに日本人選手でただ1人対応。終盤失速し、2時間13分23秒で日本人3番目の5位に終わったが、陸連幹部は高評価した。北京五輪銀メダルのジャウアド・ガリブ(モロッコ)が2時間8分24秒で初優勝。松宮隆行(コニカミノルタ)は日本人最上位の3位ながら、来年8月の世界選手権(韓国・大邱)内定基準記録には届かなかった。

 日本人で今井だけが世界レベルの仕掛けに対応した。15キロすぎ。ケニア人ペースメーカーの暴走ともいえるペースアップに10人以上の先頭集団が解体された。五輪銀メダルのガリブらトップ選手が抜け出す中に、今井の姿もあった。日本人最上位を狙うなら危険な賭け。「自分の狙いはそこじゃない。前についていき、どれだけ勝負できるか」。世界目線で15~20キロ間を14分57秒台で駆け抜けた。

 だが35キロ付近から失速。結局、松宮、高田にも抜かれ、日本人3位で今レースでの世界選手権内定を逃した。経験目的だった08年8月の北海道マラソン以来となるレースは実質的なデビュー戦。順大時代に箱根駅伝の5区で3年連続区間賞を記録したスター選手は本気で世界切符を狙っていた。福岡のテレビ局アナウンサーで婚約者の川添麻美さんら家族からの声援に応えられず、レース後に号泣した。

 日本陸連の沢木啓祐専務理事は積極的な走りに「勇気ある挑戦だった。負けての涙を見たのは久しぶり。評価しちゃいけないけど」と期待感をにじませた。山の神はマラソンの厳しさを味わったが「箱根は大学4年間で終わった。これからはマラソンで勝負したい」とキッパリ。世界選手権出場へ来年2、3月の選考レースに出るかは未定だが、希望が感じられる今井の涙だった。【広重竜太郎】