マラソン大会に出場するランナーにとって、レース前に特に心がけたいのが栄養面での準備、いわゆる「食べるトレーニング」だ。前回は食事の基本となる「5大栄養素」について紹介したが、今回はレース3日前から直前までの調整について、前回と同じく株式会社明治・スポーツ栄養マーケティング部マラソン担当の松崎愛さんに聞いた。

■レース3日前からの食事

 レース3日前、といっても基本的には「5大栄養素」をバランス良くとることに変わりはない。ただし完走に必要なエネルギーを体内に蓄えた上で、万全を期してレースに臨むためには1日3食の食事の中で摂取する栄養の比重を変えると良い。具体的にはトレーニング前には主食と果物を多めにとり、おかず、野菜、乳製品は減らす。主食や果物の糖質は走るためのエネルギーとして必要だが、それ以外のおかずなどで得られる栄養は運動する上ではほとんど使わないからだ。松崎さんは「肉や魚などのおかずは消化に時間がかかりますからね」と話す。一方、トレーニング後には、消費したエネルギー補給や疲労回復のために主食と果物を摂取するとともに、おかずも積極的にとりたい。おかずとなる肉や魚は壊れてしまった筋肉や血液を修復する効果があるためだ。「おかずを食べることで増えた分は、野菜や乳製品を減らして調整するといいですね」。トレーニングの前後で摂取する5大栄養素の比重を変え、1日3食トータルでバランスを取る、という食事が理想のようだ。

■タイムを狙うなら「カーボローディング」

 また、目標が「完走」だけではなく、好タイムでのゴールを目指しているランナーであれば、「カーボローディング」を取り入れてみても良いだろう。これは走るためのエネルギー源となるグリコーゲンを通常よりも多く体内に蓄えるために行う食事法。毎日3回の食事で主食ばかりをとるというもので、現在はレース3日前から行う方法が主流となっている。エネルギー貯蔵量が増えるため、レース途中での“ガス欠”防止の効果が期待できる。ただ、松崎さんは「マラソンではレース途中でも栄養を補給できるので、一般ランナーにはそれほど重要ではない」とも。「これが必要なのは、途中で栄養補給をしない人、つまりタイムを狙う上級者ですね。そういう人であれば、たしかに楽に走れるようになるので、日常の生活に支障を来さないようでしたらやってみても良いかもしれませんね」。