■エイドステーションでは食べ過ぎ注意!?

 自身も経験した富士山マラソンのアップダウンについては、「21・5キロ地点からすごくキツイ坂が2キロくらい続くので、そこで明らかに内臓負担が来るんですよ。だからその前に固形物を食べたら確実に気持ち悪くなります。そして32キロ過ぎからは一気に下り坂になり、内臓がさらに激しく揺れます」。このようなアップダウンのきついコースでの栄養補給は余計に気を付けた方が良さそうだ。「27キロ地点にあるエイドステーションにはおいしいものが結構置いてあって誘惑が多いんですよね(笑い)。ついたくさん食べがちですけど、注意が必要です。走っている最中は全身を使っているので、血液が筋肉に使われています。一方で、心肺機能、呼吸機能も活発になっていて、本来必要な血液が普段に比べて内臓には行きづらくなるんです。このようなことから、消化吸収能力は格段に落ちます。この状況で大量の固形物を入れると、吸収されずに胃の中に残ったまま走らなくてはならなくなります。ですから食べ過ぎには注意したいですね」。

■給水はこまめに、飲み過ぎず

 では、水分はどうすれば良いのだろうか。「レース中、『喉が渇いた』と感じたらもう脱水が進んでいる状態です。気温が低い時のレースでは身体が冷えているので喉の渇きを感じにくい場合もありますが、こまめに給水すべきですね」。脱水を避けるために走る前に塩分や水分をしっかりとり、心配であれば経口補水液を携行しておくと良いだろう。なお、富士山マラソンでは5キロごとに吸収しやすいハイポトニックのスポーツドリンクが用意されているが、飲み方にも注意したい。「ガブガブ飲んでしまうと胃に負担をかけてしまうので、1口2口程度に止めて下さい。特にレース後半はどうしても疲れや身体を冷やしたいという思いから多く飲みがちですが、飲み過ぎによる内臓疲労を起こしかねません。回数を多く、こまめに取ること意識してください」。

■レース直後の対応で翌日の疲労が違う

 そしてついにゴール。直後は動けないほど疲労し、「もう何もしたくない」と思うはず。だが、そこをなんとか頑張って、自分の身体をケアしてあげたい。「ゴールした後、30分以内に糖質とタンパク質をとってください。これをやるかやらないかで次の日の疲労度が全然違います。30分以内というのカギで、疲れているからこそ吸収が良いんです。レース直後に固形物をとるのは大変でしょうから『ザバス』など、プロテイン入りの液体やゼリーをとると良いですね」。

 また、アルコール愛飲家のランナーなら、完走後はビールで乾杯!といきたいところ。松崎さんは「アルコールを分解する肝臓は代謝や解毒などさまざまな機能を担っていて、エネルギーを生み出すのと同時に消費もしています。アルコール分解によって肝機能が低下すると疲労回復も遅れますので、覚悟して飲んでくださいね(笑い)」と付け加えてくれた。

◆松崎愛(まつざき・あい)
 株式会社明治 栄養営業本部
 スポーツ栄養マーケティング部 マーケティングG マラソン担当
 07~08年全日本男子柔道の栄養サポートを担当し、07年ブラジル世界選手権、08年北京五輪に帯同。その後、楽天野球団ジュニア育成担当、ジャイアンツアカデミーのジュニア育成に従事。Jリーグ下部組織(契約チーム)への栄養情報普及活動の他、バレーボール元日本代表の山本隆弘氏の栄養サポートを担当。現在はVAAM・ザバスのブランド担当として活動している。