羽生結弦(20=ANA)が、自身の世界歴代最高点を塗り替える106・33点で首位発進した。4回転ジャンプを2本組み入れた自己最高難度の構成に挑戦。全てのジャンプを成功させ、14年ソチ五輪でマークした101・45点を4・88点上回った。今日28日のフリーを終えて3位以内に入れば、史上初の3連覇がかかるGPファイナル(12月・バルセロナ)出場が決まる。

 106・33点。羽生が自分の記録を塗り替え、前代未聞のハイスコアをマークした。点数を押し上げたのは、SPで自身初となる4回転2本の成功だ。冒頭の4回転サルコーを、傾きながらも膝を曲げこらえて着氷。続く4回転-3回転の連続ジャンプを決めると、ゆったりと表現を見せるだけだった。ほぼノーミスの演技。スコアボードを見て驚かないのも当然だった。「久しぶりにワクワクしながらやることができた。完璧じゃないけどジャンプを全部立てて、うれしさを久しぶりに味わえました」と喜びをあふれさせた。

 わずか1カ月前に、SPの構成を4回転1本から2本へと変えた。異例となるシーズン前半での変更を自ら申し出た。SPでジャンプを2度ミスし、6位と失敗したにもかかわらず「まだ挑戦できる」とひらめきがあった。「もう(4回転を)2回やるのか」と驚くオーサー・コーチを「やりますから」と説得し、練習拠点のカナダに帰って猛練習をスタートさせた。

 できる、と確信することは昔からあった。かつて羽生を教えた都築コーチは「神懸かり的にひらめいてできることが何度もあった」と振り返る。初めて4回転トーループを成功させた時も、ふっとできるようになった。もちろん日々の努力もある。今回も「とにかく一生懸命やってきた」と羽生。わずか1カ月、意地で新SPをものにした。

 挑戦に加え、ライバルの存在がさらに心を燃やした。直前の演技で中国の18歳金が、1つの要素として歴代最高となる4回転ルッツ-3回転トーループの連続技を含む、4回転2本を成功。95・64の高得点で、技術点だけでいえば羽生のソチ五輪の得点を抜いた。「絶対抜かしてやるぞ、見てろよと思った」。技術点でも抜かし、2位の金に10・69点差をつけた。

 今回の挑戦は、かねて公言している平昌での五輪連覇へとつながっている。「4回転2本を入れないと勝てないと自分の中で思っていた。平昌五輪まで、必要になってくる。現五輪王者として、連覇するために圧倒的に強くならなきゃいけない」。さらに高いレベルを求め、追ってくる他の選手を引き離す。

 「久しぶりに楽に臨める」と余裕をもって臨む今日のフリー。歴代最高総合得点も視野に入った。【高場泉穂】