男子100メートル平泳ぎで、北島康介(33=日本コカ・コーラ)が今季ベストの1分0秒57で2位に入った。体調が万全ではない中で3週前の東京都選手権よりタイムを100分の4秒短縮。リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねた4月4日開幕の日本選手権(東京辰巳国際水泳場)に望みをつないだ。23日には約1カ月間のスペイン高地合宿に出発。日本男子初の5大会連続の五輪出場へ、ラストスパートに入る。

 すべての力を振り絞る。五輪選考会前の最後のレースとなる100メートル平泳ぎ。北島は昨年の世界選手権代表の小関とトップ争いを続け、今季ベストタイムの2位でタッチ板をたたいた。「今できる最大限のレースはできた」と一定の収穫を得て笑みを浮かべた。

 前週、1歳の長女から風邪がうつり、へんとう腺を腫らした。練習には1日休んだだけで復帰したが調整は狂う。今大会も20日の200メートルは3週前の東京都選手権よりタイムを落として4位。午前の100メートル予選もいまひとつだったが「(五輪)選考会は0秒1、2の戦いになる。少しでも修正してタイムを上げる」と懸命に立て直し、東京都選手権より100分の4秒速いタイムを出した。

 五輪で4度頂点に立った男が国内選考でギリギリの勝負をしているが、そこに悲壮感はない。初めて五輪に挑んだ高校生のころの気持ちがある。「初心に戻って、五輪切符をつかむとの強い精神力を持つ。今は期待しかない」と、16年前のシドニー五輪前のような挑戦心が支えとなっている。

 23日から約1カ月、標高2300メートルのスペイン・グラナダでの高地合宿で萩野、星らと泳ぎ込む。03年世界選手権の直前も合宿を張り、本番では100、200メートル平泳ぎともに世界記録で金メダルを獲得した縁起の良い場所。「トレーニングして強くなれる。水泳人生のラストチャンス。死ぬ思いでやる」。日本男子初の5大会連続五輪出場にすべてを懸ける。【田口潤】

 ◆競泳のリオデジャネイロ五輪の選考 4月の日本選手権で(1)各種目の2位以内(2)派遣標準記録(男子100メートル平泳ぎは59秒63、200メートルは2分9秒54)の突破、この2点をクリアした選手が選ばれる。派遣標準記録とは日本水連が、五輪の決勝進出を見込めるラインを世界ランキングなどをもとに算出し、独自に定めたもの。