悲願のマスターズ大会初優勝に向け、世界4位の錦織圭(27=日清食品)が絶好のスタートを切った。元世界トップ10で、同74位のアンダーソン(南アフリカ)にブレークポイントさえ与えず、6-4、6-3のストレート勝ち。3回戦では同30位のベルダスコ(スペイン)と対戦する。

 快勝だった。身長203センチからの豪打を武器とする相手に、錦織は1度もサービスゲームを落とさなかった。強い横風が吹く中でも動じない。ケガで世界ランクを落としているが、15年にトップ10だった相手に勝ち「ミスが少なかったし、どのプレーもほぼ完璧だった」と胸を張った。

 1週前の大会では風と弾む球に悩み、ランク下のソックに敗れた。この日は、その風を全く気にしない強さを見せた。数グラムの球の重さの違い、数ポンドのストリングスの張りの違いを実感でき、「黄金」と世界が呼ぶ右手を持つ。それが錦織を世界に飛躍させた一因だ。しかし、少し感覚が狂っただけで、思うようなプレーができないことがある。

 その感覚を、今年はコントロールできていない。いい時と悪い時の差が激しい。対戦競技なので、思うように事が運ぶことは少ない。その中でも「黄金」の右手で修正を加え、勝利を呼び込んだ。

 今大会は世界1位のマリー、2位のジョコビッチがともに右肘の故障で欠場。錦織は、マスターズ大会自身最高の第2シードで挑んでいる。初優勝に向け「多少はチャンスだが、あまり気にしていない」と冷静に滑り出した。