2016年夏季五輪の開催を目指し、石原慎太郎知事が陣頭指揮した東京都の招致活動は、弱みだった世論の支持の低さを挽回(ばんかい)するため「なりふり構わず」だった。経費は公表された150億円を上回るとの指摘もあり、都議会などで使途が追及されるのは必至だ。

 知事は昨夏、内々に各局長を集め、新銀行東京の支援のほか五輪の招致活動でも知恵を出すよう“指令”。400億円の追加出資で世論の非難を浴びた新銀行問題はともかく、五輪招致も都政の最重要課題になったことが庁内で認識された。

 水道局は宣伝費として09年度当初予算に08年度の倍の18億7000万円を計上し援護射撃。街頭ビジョンや、JRのトレインチャンネルで五輪招致のロゴを入れた水道水のCMを繰り返し放送した。

 4月に国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員会が来日した際は、招致委員会と都の招致本部は過剰とも思える受け入れ態勢も整えた。

 評価委が視察した江東区の夢の島公園には、校外学習として小学生5000人以上を集めたほか、五輪スタジアム予定地には都内の大学の柔道部員らを動員し“熱烈歓迎”。知事もプレゼンテーターや案内役で汗をかき「就任以来、知事がこんなに仕事をしたのは初めて」と幹部を驚かせた。

 IOC総会が開かれたコペンハーゲンへの「弾丸ツアー」でも、応募が不調と見るや、都職員70人余をそれぞれ自費で参加させ応援させるなど、最優先で盛り上げを演出した。(共同)