<陸上:織田記念国際>◇29日◇広島広域公園陸上競技場

 北京五輪代表の福島千里(20=北海道ハイテクAC)が“日本女子最速”の称号を手に入れた。今季初戦となった女子100メートルで追い風2・2メートルの参考記録ながら自身の持つ11秒36の日本タイ記録を大幅に上回る11秒23で2連覇した。追い風参考の過去最高は11秒29だったが、それも0秒06更新。昨年の今大会で日本タイ記録をたたき出し、頭角を現わしてから同種目7戦無敗と向かうところ敵無しと、09年シーズンも福島の強さは変わらなかった。

 電光掲示板に日本記録を上回る11秒23が点灯した。追い風参考とはいえ、驚異的な記録に場内が騒然とする中、女王はきょとんとした表情を浮かべた。福島は「びっくりした。自分のレーンだけ気持ちよく走れればと思っていたのに。いいスタートが切れました」と照れくさそうに話した。

 予感はあった。予選も追い風参考ながら11秒23でトップ通過。日本記録更新の期待が一気に高まった。決勝もスタートから一気に加速し後続を突き放した。「硬くなった」という最後でライバル高橋に迫られたが、逃げ切った。風が少しでもおさまっていれば、おそらく日本新。「(追い風参考は)残念だけど次のことを考えればこれで良かった」と悲観の色はない。

 日本女子最速の称号を手に入れた。同競技場は今年トラックを張り替えたばかり。2位高橋も11秒24とタイムが出やすい条件だった。それでも、これまで追い風参考記録でも最速は坂上香織の11秒29(3・4メートル)。それをこの日、予選、決勝(2・2メートル)でいとも簡単に更新した。日本陸連の高野進強化委員長は「さすが五輪代表。風格が出てきた」と絶賛した。

 8月の北京五輪後、イベントなどで多忙を極め、12月に腰痛を発症した。万全ではなかったが、4月初旬のグアム合宿では手時計ながら150メートルで17秒を切り、状態は上向きだった。ただ、腰痛という爆弾を抱えているだけに、走ってみないと分からない部分もあった。それがふたを開けてみると好タイム。「不安があった中でここまで走れた」と手応えを感じていた。

 すでに8月の世界選手権(ベルリン)B標準(11秒40)を突破しているが、A標準(11秒30)の突破も見えてきた。今後は5月3日の静岡国際(200メートル)に出場した後、9日の国際GP大阪大会に出場する。「日本選手権はここと同じ舞台。本番でもいい風が吹いてほしいですね」。無欲の女王の進化は今シーズンも止まりそうにもない。【松末守司】