＜テニス：全豪オープン＞◇初日◇１７日◇オーストラリア、メルボルン・ナショナルテニスセンター◇男女シングルス１回戦

　「エア・ケイ」が、世界の舞台で完全復活をアピールだ。世界８２位の錦織圭（２１＝ソニー）が同５８位のファビオ・フォニーニ（２３＝イタリア）を６－１、６－４、６－７、６－４の３時間８分で撃破。全豪初勝利を挙げるとともに、日本男子としては０５年鈴木貴男以来６年ぶりの勝ち星となった。２回戦では、同３６位のフロリアン・マイヤー（２７）と対戦する。４大大会初出場の波形純理（２８）は敗れた。

　一昨年の右肘の手術、昨年のゼロからの復帰。２年の苦闘を乗り越え、錦織が大きな１勝を手にした。「全豪の１勝は目標だった。けがから復帰して不安もあったけど、素直にうれしい」。マッチポイントでフォニーニのフォアが大きくアウトすると、２年間の思いを両手のガッツポーズに込めた。

　スタートから完璧なテニスで、難敵を封じ込めた。フォニーニはイタリア代表で、最も期待される若手だ。しかし、錦織は「出だしが良くて、集中して全開で行こう」と圧倒した。第１ゲームで相手のサーブを破ると、わずか１ゲームしか落とさずに２６分で第１セットを先取。その勢いで、第３セットこそ落としたが、格上を翻弄（ほんろう）した。

　今年を勝負の年と位置付けた。自ら「もう言い訳ができない」と覚悟を決めた。昨年までは、けがを理由に「１００％じゃない感覚があった」。しかし、今年は、開幕戦のインドで「ラケットにちゃんとボールが乗っている感覚を得た」と、２年ぶりのツアー８強に進出。自分の中で好調の手応えがあるだけに、もう負けを他の理由にすることはできない。

　新たな出発を機に、すべてを一新した。５年契約を結んだユニクロのウエアは、今大会で４大大会デビューを果たした。「デザインも意見を取り入れてもらってます。最高の着心地」。トレーナーもコーチも新しくなり「モチベーションが高くなる。今年からすごく変わると思う」と、新たな気持ちで１勝に結び付けた。

　プレースタイルも新たな一面を見せた。これまではドロップショットやジャンピングストロークの「エア・ケイ」など、奔放なプレーが持ち味だった。しかし、この日は安定感を前面に出し、決して無理をしないプレーを披露。「経験を積み重ねていくことで、変えていく時かな」と、一段上のレベルに踏み出した。

　追い風も吹いている。２回戦で対戦するはずだった元世界３位のダビデンコが敗退。錦織は「えっ？

　本当ですか」と驚いた。勝ち上がったマイヤーは、０８年デルレービーチでツアー初優勝を遂げた時の初戦の相手と験もいい。

　今年の目標の１つに、松岡修造がつくった世界４６位の日本男子最高位の更新がある。今大会でベスト８に入れば、松岡超えも見える。「テニスも体調もすべていい。頑張りたい」。いよいよ今年こそ、新たに生まれ変わった錦織の年が幕を開ける。【吉松忠弘】