ロンドン五輪で金メダルが期待される日本の競泳男子平泳ぎに「北島2世」の呼び声高い隠し玉がいた。北島康介を育てた平井伯昌コーチに師事する鹿児島・志布志高2年の山口観弘(あきひろ=17)。昨年11月に上京し、現在は国立スポーツ科学センター(JISS)を拠点にロンドン切符を目指す有望株だ。平井コーチも才能にほれ込み、2月中旬の米高地合宿に抜てき。「勢いがあるし、ひょっとする」と太鼓判を押す。00年シドニー五輪に17歳で出場した北島の再来となるのか、注目が集まりそうだ。

 JISSの強化合宿に、平井コーチの指示をあおぐ、山口の姿があった。柔らかくバネの利いた躍動感あふれる泳ぎ。北島をほうふつとさせる相手を射る視線。無名の17歳だが、日本水泳界に現れたダイヤの原石だ。昨年11月に競泳合宿に参加するため上京し、そのまま世界の北島を育てた平井コーチの門をたたいた。

 平井

 男子選手を指導するのは康介以来。最近は女の子ばかりでしたから楽しい。康介はスピード系ですが、彼はバネがあり、持久力がすごい。五輪はひょっとすればひょっとする。

 男子平泳ぎは日本が世界に誇るお家芸。北島を筆頭に、立石、冨田ら世界トップレベルが顔をそろえる。そんな中、山口の成長は著しい。昨年7月の世界ジュニア100、200メートルとも大会新記録で2冠に輝くと、その勢いでインターハイ、国体も制した。100メートルの1分0秒98、200メートルの2分11秒50はともに昨年の日本ランク6位。持ち味の持久力を生かし、200メートルでのロンドン切符が現実味を帯びてきた。

 山口は「4年後のリオで頑張れ、なんて言われますが、それじゃ遅い。平井先生からは200メートルで五輪が近いと言われていますけど、100メートルも狙える位置にある」と力強い。中2で見た北京五輪。北島の泳ぎに刺激され「おれも五輪に出る」。その北島と昨秋、練習する機会があったが「楽しかった。康介さんって練習弱いんです。僕が勝つこともあった」。あこがれの男も今や「ライバル」。そんな強心臓ぶりも魅力だ。

 志布志ドルフィンクラブに自前プールはない。専任コーチはおらず、指導する大脇雄三コーチの本職は獣医師という異色ぶり。それでも志布志市の協力もあり、市民プールを好きに使わせてもらい国内トップレベルに成長した。進学校の志布志高に在籍するが、学校側はリポート提出で授業を免除。4月の日本選手権までは水泳に完全集中する。

 200メートルでの持ちタイムは北島、冨田らと3秒以上違う。それでも山口は「手応えはある。2分8秒台を出したい。五輪が代表デビュー戦っていうのもおもしろい」。そして今年の目標を問われるや「2分7秒台で五輪優勝」とさらり。怖いもの知らずの17歳が現れた。【佐藤隆志】

 ◆山口観弘(やまぐち・あきひろ)

 1994年(平6)9月11日、鹿児島県志布志市生まれ。5歳から志布志DCで水泳を始め、すぐに平泳ぎを開始。志布志中2年で全中優勝。志布志高2年の昨夏インターハイを制し、9月山口国体少年A200メートル平泳ぎで2分11秒50(11年日本ランク6位)のタイムで優勝。100メートル1分2秒35、200メートル2分11秒95の日本中学記録も保持。家族は両親と兄。174センチ、67キロ。血液型B。