<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第6戦・NHK杯>◇24日◇宮城県セキスイハイムスーパーアリーナ

 SP1位の浅田真央(22=中京大)がフリーで117・32点をマークし、合計185・27点で優勝した。ジャンプが冒頭から失敗続きで、本人は「ダメでした」という悔しい戴冠。第3戦中国杯から連勝で、GPファイナル(12月6日開幕、ロシア・ソチ)進出は決定し、14年ソチ五輪会場で行われる「前哨戦」での雪辱を誓った。GPは10勝目で、通算勝利数で金妍児(韓国)らと並び、歴代3位タイとなった。合計185・22点の鈴木明子(27)は2位でファイナル進出。今井遥(19)は8位だった。

 演技を終えた浅田は、深いため息をついた。銀のアイシャドーを施したまなざしが、思わず下を向いた。得点を待ちながらつぶやいた言葉は、ファンへの「ごめんなさい」。逆転負けを覚悟し、表示された得点を見て目を丸くした。5000人以上が詰め掛けた場内も騒然。鈴木をわずか0・05点かわしたが、納得できない演技での優勝。ジャンプの出来を聞かれ、「あの~、ダメでした…。やってきたことを出せなかった。すごく残念です」。まるで敗者の弁だった。

 抜群の安定感を誇る冒頭の3回転ループがまさかの2回転になった。朝の練習から不調で予兆はあった。原因は気持ち。「SPでやってきたことを出せて、フリーに向けて良い状態だったので、冷静になろうと思いすぎた。勢いや強さを出せなかった」。

 攻めの構えを欠き、ジャンプがことごとく失敗。3回転ルッツは2回転に加えて踏み切り違反、3回転サルコーは1回転、3回転-2回転の連続ジャンプは2回転フリップだけに。佐藤コーチは「滑りにスピードが出るほど、ちょっとした狂いが表面化する。自分で自分に裏切られる感じ。心理的な面が大きい」とおもんぱかった。

 救いは優勝した中国杯を上回った、スケート技術など表現力を示す5項目の演技構成点。ジャンプの失敗を助けられた形になり、「評価していただいてホッとしています」と話した。

 佐藤コーチとは3季目。基礎から見直した技術が身に付いてきている証拠だ。以前は上下動が激しかった動きを粘り強く改善。同コーチは「競馬のジョッキーは頭の位置が一定です。上下動がないと滑りも安定する」と説明する。

 本人の悔しさは募るが、05年10月の中国杯でシニアGPデビューしてから20試合目で節目の10勝目。通算勝利数では、金妍児、ブッテルスカヤと並び、3位タイになった。

 カナダで開かれた昨年のファイナルは、母匡子(きょうこ)さんの体調が急変し、試合を欠場して急きょ帰国した。最愛の人を亡くしてから1年。「今日の悔しさをぶつけたい」。ソチ五輪の前哨戦は、リベンジ、そして今度こそしっかりした滑りを母に届けるための舞台にもなる。【阿部健吾】