エリート街道に興味はない。日本スポーツ振興センター(JSC)の五輪選手の発掘を目指した合同トライアウトが1日、都内で行われた。16歳から39歳までのスポーツ経験者69人が参加。サッカー、ボクシングの元プロ選手に交じって、開成高-東大で25歳からテニスを始めた市川誠一郎さん(30)がいた。

 東大を卒業すると省庁や一流企業に就職する同級生を横目に、テニスを始めた。スポーツ経験はなかったが「勝負の世界でどこまでいけるか試したい」と一念発起。今も家庭教師、ウエーターなどのアルバイトをしながら練習をこなす。テニスでの五輪出場を目指すが、この日は「自分がどの程度通用するか」と他競技の関係者のいる合同トライアウトを受験した。

 日本ランキングの最高位は300位前後。1位で6歳下の錦織は数億円以上を稼ぐが、アルバイトの年収は100万~200万円ほど。東大時代の同級生とは「1ケタ違います」と話すが、悲愴(ひそう)感はない。「勝負の世界は、自分の努力で白黒がはっきりつくし、言い訳ができない」。東大卒30歳フリーターの目は輝いていた。【田口潤】