<バレーボール:W杯女子大会・日本3-2ドイツ>◇10日目◇17日◇東京・代々木第1体育館

 日本が五輪への望みを最終戦までつないだ。世界ランク4位の「火の鳥ニッポン」は、同9位ドイツとのサバイバルマッチに逆転勝ちし、4位を死守した。好レシーブと勝負どころでのブロックで粘り、木村沙織(25=東レ)と江畑幸子(22=日立)の両エースが全開。終盤は新鍋理沙(21=久光製薬)も活躍してフルセットの熱戦を制した。今日18日に今大会首位の米国戦に勝てば、同3位中国の結果次第でロンドン五輪切符を獲得する3位へ浮上し、3大会連続の五輪出場が決まる。

 火の鳥は、やはり不死鳥だった。日本がボールと希望を懸命につないだ。平均身長で9センチ高いドイツに、一丸となって立ち向かう。2時間を超える熱戦を江畑のスパイクで締め、真鍋監督は「選手の団結力に尽きる。しびれましたね」。最終戦まで五輪への望みをつなぎ、声が上ずっていた。

 土俵際を「全員バレー」で踏ん張った。試合前に中国が勝ち、負ければ今大会での五輪出場消滅の危機。リベロ佐野が細い腕でボールに飛びついた。第1セット(S)を先取。しかし、第2セットを落とし、第3Sも25-27と競り負け1-2。その土壇場を救ったのは日本の「ダブルエース」だった。

 まずは江畑だ。「みんな諦めない気持ちで戦っていた」。銅メダルを獲得した昨年の世界選手権で彗星(すいせい)のように現れた22歳は、第1S12-11からの連続得点で加速。前半は高いスパイク決定率に驚いた真鍋監督が、セッター竹下に「まず江畑を使え」と指示したほど。振り幅の小さい右腕から25点もたたき出した。

 大舞台での強さは恩師が太鼓判を押す。秋田・聖霊女短大付の佐々木純一郎監督(63)は言う。「器が大きいというかずぶとい子。中学の時から大きな会場や大事な試合ほど活躍してたんです」。小顔に見事な「福耳」を持つ成長株は、真鍋監督が「木村と並ぶエース」と格上げするなど、今や“福の神”になった。

 そして木村だ。両チーム最多の26点に「今のチームはどうやったら点が入るか覚えてきている」。レシーブが乱れた2段トスを何度も決め、苦手なブロックも3本決めた。東京・成徳学園(現下北沢成徳)2年のW杯で「スーパー女子高生」と呼ばれてから8年。今でも韓国エース金軟景や男子代表の米山裕太(東レ)らのプレーをDVDで編集し研究する。あどけない笑顔はそのままだが、たくましい柱に成長した。

 開幕3戦で2敗し、真鍋監督が「崖っぷち」と言った状況から世界1位のブラジルを撃破し、強豪ドイツも下して4連勝。木村は「勝ちを重ねながら、いいチームになってきた。全員が活躍すれば世界と戦える」と自信を見せる。フルセット勝利で上積みした勝ち点は「2」。最終戦の相手は首位に立つ世界ランク2位の米国。さらに中国の結果を待つ厳しい状況に変わりはないが、今の日本は何かやってくれそうな気がする。【近間康隆】