<ラグビー・日本選手権:NTTコミュニケーションズ11-7東海大>◇7日◇東京・秩父宮ラグビー場◇1回戦

 東海大が「幻のトライ」で金星を逃した。来季からトップリーグに昇格するNTTコミュニケーションズと対戦し、後半1分にFB豊島翔平(3年)がインゴールにボールを持ち込みながら、パスを試みて失敗、トライにならなかった。最終的に4点差で敗れた。防御などでは互角以上の戦いだっただけに、悔しい1回戦敗退となった。

 インゴールでのパスという珍しいプレーが出たのは、東海大が2点リードの後半1分だった。豊島が快足を飛ばして左端から走り込み、そのままボールを地面に置けばトライだったが、中央にいたSH鶴田へ球を投げた。これが通らず、相手に押さえられた。

 パスの意図は、その後のゴールを確実に決めるべく、中央へトライしてもらうことだった。豊島はキッカーも務める。「風も強かったし、キックの調子も良くなかったので」。鶴田にはアイコンタクトで狙いは伝わっていたが、少しだけ手元が狂い、絶好の追加点の好機をフイにした。木村監督は「豊島は宇宙人だからなあ」と苦笑するしかなかった。

 結果的には、皮肉な4点差負けだ。「あのゴールが決まらなくても、勝てたんですよね」と、豊島は悔しさを隠しきれない。防御などで踏ん張り、終盤までリードを保ったが、後半37分から2PGを献上。打倒社会人の夢を手放した。

 「僕のせいで負けた」と自分を責める豊島に、コーチがベッカムの話をしてくれたという。98年W杯で退場処分となり戦犯扱いされた話だ。その後、ベッカムが大スターになったように、この日の敗戦をバネに豊島に成長してほしいという意味だろう。豊島は昨年のU-20日本代表、速さを武器とする将来の日本代表候補生でもある。【岡田美奈】