<世界柔道連載:東京経由ロンドン行き>3

 柔道界は今、変ぼうを遂げている。国際柔道連盟(IJF)は改革を推し進め、08年北京五輪後からの2年間で大きな変化を遂げた。五輪出場権のかかる世界ランキング制を導入、世界選手権の毎年開催、足取り禁止など、柔道界を取り巻く環境は様変わりした。この激変に対応できる柔道家だけが、12年ロンドン五輪へ生き残れる。

 今大会が変わりゆく柔道界を象徴している。これまで隔年開催だったが、08年北京五輪後は毎年開催となり、現行方式では今回が初の2年連続の大会となる。また1階級1人制だった各国の代表枠は2人制(無差別級は最大4人)に変更。若手にチャンスを広げるIJFの狙い通り、約850人の選手が参加する過去最大規模の世界大会になる。

 恩恵を受けて、多くの新顔が世界舞台を踏む。日本代表は32人中18人が初出場。女子代表の園田監督は「2人制は選手にいい刺激になる」と話す一方でクギも刺す。「選手には『今は2人だけど2年後(の五輪出場)は1人だぞ』と話した」。特に2枠目で滑り込んだ選手の慢心は許さない。

 北京五輪後、柔道家に求められる資質も変わってきた。畳の上で求められる勝負力は不変だが、長いシーズンを戦い抜く忍耐力も求められている。同五輪後に世界ランキング制を導入。世界ランクは五輪出場権にも直結するため、今の選手は定期的に試合に出て成績を残さなければならない。

 かつて谷(当時田村)亮子が4年をかけて84連勝、5年半で65連勝という記録を打ち立てたが、女子52キロ級の中村美里はこの1年で30連勝をマーク。急増した試合をこなしながら、世界を渡り歩いている。

 畳の上のルールも変わった。1月から足取り(相手の足をいきなり手で取る技)が禁止。北京五輪初戦で、もろ手刈りで1本負けした現100キロ超級の鈴木桂治も現行ルールなら救われていた。勝利至上主義で本来の柔道とは程遠いレスリングのようなスタイルが海外勢にまん延していたが、IJFが歯止めをかけた。1本を狙い、組み合う日本柔道には有利と言われている。

 だが男子代表の篠原監督は「(外国人選手は)適応力が高い。あれだけ足を狙っていた選手がしっかり組んでくる」と警戒する。海外勢も変革に対応しながら今大会に挑んでくる。日本代表も潮流に乗っているか問われる大会だ。【広重竜太郎】(おわり)