大相撲時津風部屋の序ノ口力士時太山(ときたいざん=当時17、本名斉藤俊さん)の暴行死事件で、傷害致死罪に問われた元親方山本順一被告(59)の判決公判が29日、名古屋地裁で開かれ、芦沢政治裁判長は懲役6年(求刑懲役7年)を言い渡した。

 共犯とされた兄弟子は執行猶予付き有罪判決が確定しているが、元親方は事件を主導したとして実刑判決となった。元親方の弁護側は即日控訴。元親方は収監されたため、保釈請求した。

 判決理由で芦沢裁判長は、山本被告の兄弟子らへの暴行指示を認め「部屋で絶大な支配力を有する立場にあった被告が犯行を主導した」と指摘。「犯行後に兄弟子らに暴行はなかったかのように口裏合わせを行い、反省も見られない」とした。

 死亡直前のぶつかりげいこについて「被害者が部屋から逃げ出しことなどに対する制裁目的。異例の長時間にわたって行われ、正常なけいこの範囲を明らかに逸脱していた」と違法性を認定した。「2日間にわたる暴行が死亡につながった」と一連の暴行と死亡との因果関係も認めた。

 事件は相撲界の体質や指導の在り方を見直す契機になった。弁護側はこれまで、暴行指示は兄弟子の独断で、元親方は「指示はしていない」と主張。ぶつかりげいこは通常のけいこの範囲内としており、管理責任者として業務上過失致死罪の適用が妥当と、執行猶予付き判決を求めていた。

 判決によると、山本被告は兄弟子ら(=執行猶予付き有罪確定)と共謀。2007年6月25日、夕食の席で斉藤さんをビール瓶で殴った後、兄弟子に指示して斉藤さんを木の棒で殴るなどした。翌26日には、約30分間ぶつかりげいこと称して斉藤さんを土俵にたたきつけ、金属バットで殴るなどして多発外傷性ショックで死亡させた。