横綱朝青龍(28=高砂)にふてぶてしさが戻った。6日、東京・墨田区の出羽海部屋への出げいこ後、NHK解説者・舞の海秀平氏(40=元小結)の発した「引退」の言葉に過敏に反応。角界の先輩に対し「顔じゃないよ(あなたに聞かれる筋合いはないよ、の意味)」と言い放った。一方で11日初日の初場所(両国国技館)出場については、歯切れが悪かった。左ひじに不安を抱えたまま、7日は横綱審議委員会のけいこ総見に臨む。

 「朝青龍節」は健在だった。出羽海部屋への出げいこを終え、迎えの車に乗ろうとした時だ。けいこを見ていた元小結の舞の海氏が「禁断の言葉」を発した。

 舞の海氏

 まだ引退しないでくださいね。

 部屋関係者が「最近、その言葉を聞くと表情が一変する」と証言する「引退」の2文字…。朝青龍は角界の先輩に対して容赦なく、非礼な言葉を浴びせた。

 朝青龍

 顔じゃないよ。

 口では笑いながら冗談めかしたが、目は笑っていない。「今のオレに引退がちらつくのか。番付社会の相撲界、横綱のオレは格が違うんだ」とでも言いたげな怒気を含んだ表情。同氏も「さすがに怒ってましたね」と苦笑いした。

 業師の思わぬ「真っ向勝負」に動揺したのか、初場所出場については、歯切れは悪かった。4日に「イケイケでいきましょう」と出場を明言し、場所中のCM放送も決定。この日も「精いっぱいやって、結果を出したいという夢がある」と意欲を見せた。一方で同氏の「出るんですか?」の問いに「まだ、分かんない」と即答。午後の明治神宮奉納土俵入り後も「まだ、分かりません」と話した。

 「口」とは対照的に、相撲は元気がない。けいこでは前頭栃乃洋、栃煌山らとの申し合い18番で16勝。突き放しや左差しから一気の攻めを見せながら、がっぷり組むと苦戦した。テーピングした左ひじを気にし続け、「ちょっと力は入るけど、あんまりダーッといかない」。首をひねった。

 7日は、横綱白鵬から申し合いラブコールを送られたけいこ総見だ。朝は「やりたい人とやればいいじゃないか」と逃げ切る姿勢だったが、午後、テレビカメラに囲まれると「(申し合いに)応じるよ。楽しみだね」と強がった。今年の目標を「あとは生きるだけ。アハハ」と自虐的に笑った朝青龍。進退を懸ける場所まで、時間はない。【近間康隆】