<大相撲秋場所>◇7日目◇19日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28=高砂)が“蹴り出し”で全勝を守った。東前頭3枚目玉乃島(32)を送り出そうとした際、右ひざで相手の左尻をドスン。本人や武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)も故意の「蹴り」を否定したが、協会にはファンからの抗議電話が殺到した。「暴れん坊横綱」らしい勝ち方で、曙と並ぶ歴代5位の横綱432勝目をマーク。大関琴欧洲(26)が西前頭3枚目鶴竜(24)に敗れ、全勝は朝青龍と大関琴光喜(33)の2人となった。連敗阻止した横綱白鵬(24)と琴欧洲、鶴竜が1敗で追う。

 今場所2度目の満員御礼に、朝青龍が「新技」で応えた。反則スレスレの“蹴り出し”だ。玉乃島に左ひじをきめられて後退。苦境でうまくいなすと、俵に詰まった相手は後ろ向きになった。あとは押すだけのはずが、それでは終わらない。朝青龍は両手で押しながら、痛めているはずの右ひざを、玉乃島の左尻に「ドスン!」とぶつけた。思わぬ「ひざ蹴り」にファンは騒然とした。

 もちろん朝青龍は故意でないことを主張した。蹴りを問う声に「足が前に出ないから。相手は重い(169キロ)からね。蹴ったんじゃないと思うよ」と冷静に説明した。夏巡業中に痛めた右ひざは、今でもテーピングで固める。万全でない右足はすり足できず、大きく振り上げるしかなかったのだろう。患部を強烈にぶつけたが、足は引きずることなく引き揚げた。

 協会には「反則じゃないのか」という抗議電話が10分以上、約30件続いた。「胸や腹を蹴ること」は反則だが、尻については明記していない。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は「体が一緒にいったんでしょう。蹴りじゃないよ」と、流れと解釈。土俵下の放駒審判長(元大関魁傑)も「確かにひざは当たったけど、動きの中で、蹴りにいったとは見えなかった」と説明した。

 節目の白星は「暴れん坊横綱」らしい勝ち方だった。通算出場800回目で、横綱432勝目。同じ高砂一門で、入門以来かわいがってもらう第64代横綱曙と並んで歴代5位となった。琴欧洲が敗れ、無傷の7連勝は琴光喜と2人だけ。4場所ぶりの優勝について「意識ないね」とぶっきらぼうに答えたが、風呂上がりはカメラマンに話しかけるなどご機嫌だった。下半身の軽さを見せながらも、白星を積み上げていく。荒々しい取り口は、朝青龍なりの好調宣言にも映る。【近間康隆】