大相撲の横綱審議委員会(横審)が、異例の抗議文を提出した。都内の両国国技館で25日、臨時の会合を開催。8月10日発売の月刊誌「文芸春秋」に、日本相撲協会の外部理事で、特別調査委員会の座長を務める伊藤滋氏(79=早大特命教授)が、横審を「昭和の遺物」などと批判する記事が掲載されたことを問題視した。会議に先立って鶴田卓彦委員長(82=元日本経済新聞社長)が抗議文を作成し、この日の会議に出席した全9人の委員がサイン。放駒理事長(元大関魁傑)に手渡す騒動となった。
不祥事が相次ぐ角界に、今度は外部の関係者同士の“場外乱闘”が起きた。伊藤氏が文芸春秋で「横審は横綱の品格や見識を問うていればいいのであって、改革についておせっかいを焼かなくてもいい」「権威主義的な昭和の遺物」と横審を痛烈に批判。これに鶴田委員長は「横審を侮辱する暴言。看過するわけにはいかない」と、当初より会議の開始を30分遅らせて抗議文を作成。出席した全9人の委員がサインし、同席した放駒理事長に提出した。
会議は20分足らずで終了したが、ほとんどが抗議文に割かれた。当初は新執行部との顔合わせが主目的だった。冷静で客観的な視野が求められる横審の会議にあって、鶴田委員長は「怒りをあらわにしている人の方が多かった」と、異例の光景を振り返った。歌舞伎俳優で人間国宝の沢村田之助委員は「非常に腹立たしい。記事のコピーを持参したが、すでにみなさん読んでいた」と、全員が同じ気持ちだったと説明した。
横審は今年2月、元横綱朝青龍関に引退勧告をしたが、横綱に関係ないところで正式に勧告や文書を出すのは極めて異例だ。だが抗議文によって今後、謝罪を求めたり、責任を追及することはない。横審のメンバーが伊藤氏と直接会う予定もない。伊藤氏はこの日「何も言うことはありません」とコメントを発表。抗議文はすでに放駒理事長が速達で郵送する手配を済ませ、近日中に伊藤氏が目を通すことになる。鶴田委員長は「向こうが『言い過ぎた』とかいうことになれば一件落着。相手が反論してくれば?
こちらも、さらに言わざるを得ない」と、険しい表情で話した。
双方とも外部から力を貸してくれていると知るからこそ、この件の感想を求められた放駒理事長は「答えようがないですね…。こういうことにならないのが一番」と、どちらの肩を持つこともなく苦笑いに終始した。不祥事からの再起を期す中で、内輪もめしている場合ではないことは、協会員の一致した意見だろう。

