<大相撲九州場所>◇11日目◇24日◇福岡国際センター

 大関魁皇(38=友綱)が、運も味方につけた。西前頭4枚目の豪風(31)に後ろ向きにされたが、相手が足を滑らせて転倒。完全に負けた内容ながら、白星が転がり込んだ。2日目から勝ちっぱなしで、04年春場所以来の10連勝。神懸かり的な強さで、横綱白鵬らとともに1敗を守り、04年秋場所以来の優勝さえ見えてきた。

 こんな勝ち方は、経験がない。幕内1400回目の取組は、魁皇さえも驚いた。「相手に背中を向けて勝ったことは?」と聞かれると「さあ、分かんない」とポツリ。「あんなので勝つってのは、なかなかないし…。決まり手?

 知らない」。運が味方した、珍しい一番だった。

 立ち合い直後、豪風に肩透かしを食った。土俵を割りそうになったが、踏ん張った。時計回りに動いて体を残したが、相手に背中を向ける格好になった。普通なら送り出される場面で、気づくと相手がはいつくばっていた。

 魁皇

 すぐ向きなおそうと思ったら、勝手にこけてた。後ろにつかれて、もうダメかと思ったけど…。動いていれば、何とかなるもの。引かれても残ったのは、体が動いているから。

 師匠の友綱親方(元関脇魁輝)は「サーカスだね。ついてる」と言い、NHK解説の北の富士さんは「相撲内容はどうでもよくなってる。何かついてきてるね」と話した。負けた豪風は「思いっきり滑りました。分析するわけじゃないですけど、今場所の魁皇関は運も引き寄せて勝ちにしている」と振り返った。

 2ケタ勝利は、07年春場所以来21場所ぶり。右ヒザ痛に加え、前日の取組で痛めた左手親指は力が入らない。連日、午後11時まで治療が続くという。「あきらめないで、頑張ってやるのが大事」と魁皇。過去11日目までに2ケタ勝利を挙げた5場所中、3回は優勝、1回は優勝決定戦まで進んだ。本人は「まったくない」と否定するが、何が起きてもおかしくない風が、魁皇に吹いている。【佐々木一郎】