<大相撲名古屋場所>◇11日目◇20日◇愛知県体育館

 大関挑戦中の関脇琴奨菊(27=佐渡ケ嶽)が、全勝の横綱白鵬(26)を堂々の攻めで寄り切り、大きな9勝目(2敗)を挙げた。得意の左四つからがぶり寄りを決めた。同じ福岡県出身の先輩の大関魁皇(38)が引退。「自分がここで頑張らんと」と奮起して、白鵬戦の連敗を19で止めた。日馬富士(27)が無敗を守り、優勝争いの単独トップに立った。

 全盛期の魁皇をほうふつとさせるような、左四つからの力強い相撲だった。琴奨菊は、白鵬の右の張り差しに構わず、左腕をねじ込んだ。両まわしを引くと、低い重心から得意のがぶり寄り。座布団が舞う中で勝ち名乗りを受けたとき、頭の中は真っ白だった。

 琴奨菊

 強く当たって攻めることだけを考えた。自分を信じた結果。今日は本当に大きいです。

 同郷の大先輩が現役引退。琴奨菊は「ぽっかり穴があいた」と動揺した。「見習うところがいっぱいあるから。相撲に対する姿勢、心構えとか教えてもらった」。尊敬の念はいつまでも変わりない。魁皇に“恩返し”する意味でも、この勢いで昇進を決めたい。

 「魁皇関がいたから、変な意味で安心していた部分があった。これからは自覚してやっていかないと。自分はここで頑張らんとあかんと思った」。大関以上の日本人が不在になり、琴奨菊への期待は高まる。この日の場内には「琴奨菊コール」が自然発生。白鵬を上回る声援が後押しした。

 24秒7の熱戦を土俵下で見守った貴乃花審判部長(元横綱)は「横綱相手に言うことない相撲だった。今の相撲を取っていけば、結果はついてくる」と太鼓判。さらに「相撲界の明るい未来のために頑張ってもらいたい」と、期待を寄せた。

 大きなヤマを越えた。これで横綱、大関戦は終了。大関昇進の目安とされる今場所12勝には、残り4日間で3勝。初日の黒星で狭まった扉が大きく開いてきた。「魁皇関に少しでも近づけるよう頑張りたい。1番1番です」。油断せず、この勢いを保ちたい。【大池和幸】