チェコ出身の幕内隆の山(28=鳴戸)が26日、千葉・松戸市の鳴戸部屋で会見し、結婚することを発表した。相手は千葉・鎌ケ谷市在住で交際8年の野口珠美さん(32=家事手伝い)。すでに長女苺愛(まいあ)ちゃんが5月に誕生しており、近日中に婚姻届を提出する。相撲の取り口と同様、土俵外でもサプライズを起こした。

 隆の山が突然、結婚することを発表した。秋場所千秋楽の相撲を取り終えた後、珠美さんを連れて、鳴戸親方(元横綱隆の里)にあいさつ。「結婚させてください」と伝えた。師匠からは「食わせていけるのか?」と問われたが「頑張ります」ときっぱり言った。

 親方の了解を得られたため、この日の昼ごろ「結婚してくれますか?」と正式にプロポーズ。「喜んでくれました」。午後4時ごろ、日本相撲協会を通じて発表し、その1時間後には鳴戸部屋で会見するという、相撲同様の早業だった。

 知り合ったのは、来日2年の03年。三段目だった当時、知人を通じた食事会の席だった。今ほど日本語が流ちょうでなかったが「明るくて、話しやすい相手でした」と好印象を抱き、交際に発展。「前から(結婚を)考えていました。ちょっと前まで幕下だったので、強くなって、番付を上げてから、親方にお願いしました」。

 角界では、関取になるまで結婚はご法度。5月には長女苺愛ちゃんが誕生していた。東幕下2枚目だった5月技量審査場所で十両昇進を決められたのも、最愛の人と子供を幸せにする決意が原動力になったのかもしれない。「いろいろな時、支えてもらいました」と振り返った。

 十両は1場所で通過し、秋場所では新入幕を果たした。わずか98キロで、100キロ未満の幕内力士は舞の海以来14年ぶりだった。細身で奮闘する姿は観客の心をつかみ、力士の敢闘精神を評価するアンケートでは、15日間中、最多の4回も1位を獲得していた。

 チェコにいる母ヤナさんは「早く孫の顔が見たい」と話しているという。秋場所は5勝10敗で、九州場所の十両陥落が濃厚だが、結婚は目に見えない力になるはず。「また頑張ります」と短く言って、決意を示した。【佐々木一郎】

 ◆隆の山俊太郎(たかのやま・しゅんたろう)本名パベル・ボヤル。1983年2月21日、チェコ・プラハ生まれ。7歳で柔道を始める。00年の世界ジュニア相撲選手権で軽量級3位。01年九州場所で初土俵。今年名古屋場所で新十両に昇進した。初土俵から所要57場所での新十両は、外国出身ではブラジル生まれの若東の58場所に次ぐ2番目のスロー出世。チェコ出身初の関取。今年秋場所で新入幕。年6場所制で十両1場所通過は大輝煌、市原(清瀬海)に次ぐ3人目。得意はもろ差し、投げ。185センチ、98キロ。血液型はB。