大相撲九州場所(13日初日、福岡国際センター)で大関とりに挑む関脇稀勢の里(25=鳴戸)が、元横綱の北の富士勝昭氏(69=NHK解説者)から昇進の太鼓判を押された。9日、福岡市東区の鳴戸部屋で調整。仕上がり具合を見届けた同氏に「普通に取れば(昇進目安の)11勝は大丈夫」と言わしめた。7日に師匠の前鳴戸親方(元横綱隆の里)が急逝。葬儀を控え、相撲に集中できるか不安も残るが、大先輩の心強いエールに気持ちを高めた。

 稀勢の里は稽古を終え、上がり座敷の北の富士氏に水をつけた。激励にうなずいて口元を引き締める。期待の大きさを感じ取った。場所直前に師匠が急死。部屋付きの西岩親方(元幕内隆の鶴)が前日8日に鳴戸部屋を継承して、この日が最初の稽古だった。新師匠は不在だったが、25歳の部屋頭は「(気持ちに)特に変わりはない」とやるべきことを自覚しているようだ。

 心配して訪れたという北の富士氏は「普段通りにやってたな。(稀勢の里の)大関とりは今場所の焦点だからね」と安心した様子。「試練だと思ってやらないとしょうがない。今までも苦労してきてるから、ここ一番で精神力の強さを発揮するんじゃないか」と分析。特に目を引いたのが「右の攻め方」だという。

 稀勢の里といえば、左からの強烈なおっつけが代名詞。9月秋場所では横綱白鵬の右差しを、左おっつけで封じて完勝した。加えて今場所前は右を研究。先日には「1つより2つ武器を持ってる方がいい」と話していた。この日の申し合いでも右をうまく使った攻めが光り、23勝3敗。師匠が天国へ旅立った悲しみは消せない。そんな中でも相撲の幅を広げようと鍛錬に必死だ。

 昇進目安は今場所11勝。精神、技術の両面を確認した北の富士氏は「普通に取れば大丈夫」と太鼓判を押した。稀勢の里は今後、千葉県松戸市にいったん戻り、故鳴戸親方の通夜と告別式に参列予定。最後の対面を行い、恩返しの場所に向かう。【大池和幸】