<大相撲春場所>◇2日目◇12日◇大阪府立体育会館

 大関把瑠都(27=尾上)が嘉風(29)をつり出しで破り、連勝を決めた。前回の対戦(昨年秋場所)で負けた相手を高々とつり上げる、把瑠都らしい相撲を見せた。

 把瑠都が嘉風をつり上げた瞬間、館内がどよめいた。東西の支度部屋でモニターを見つめる力士たちの会話も止まる。右85キロ、左93キロの握力から繰り出される把瑠都リフトで、136キロの相手を土俵の外へと運んだ。

 決まり手については「たまたま」と言うが「一番安全な策」と表情を変えなかった。昨年秋場所で負けた相手だった。もろ差しを許し一方的に攻め立てられた。「それは記憶にあった。相手をつかまえたかった」と把瑠都。この日の立ち合いでは脇を締め、素早い相手に右を差すと一瞬でつかまえた。緻密な対策の先に豪快な技があった。

 敗れた嘉風も支度部屋では苦笑いするしかなかった。報道陣に「つられた気持ちを聞きたいんでしょ?」と自虐的に言い「居心地いいものじゃない」と吐き捨てた。同部屋で把瑠都の稽古相手の幕内天鎧鵬を、申し合いでつり出すこともある。194キロの巨漢も「自分をつれるのは大関だけ」と浮き上がる未知の感覚に目を丸くする。

 初日、把瑠都は部屋に戻ると自分の取組をVTRで確認した。基本的に自分の映像を見ることはないが「どんな相撲だったのか確認したくて」と禁を破った。前日の支度部屋では「足が出なかった。もっと当たっていかないと」と話していたが、映像を見ると「思ったより当たれていた。悪くはない」。初日でナーバスになりながらも、及第点を与えられる内容に手応えを感じた。

 連勝スタートについて「とりあえずは良かった」と息をついた。一方で綱とりは「意識していない。いつも通りと思って臨んでいる」と地に足がついている。初日に臥牙丸を退けた上手投げに続き、持ち味を発揮する勝ち方で勢いに乗りそうだ。【高橋悟史】