<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇22日◇愛知県体育館

 横綱になって30場所。横綱白鵬(27=宮城野)が1人横綱となって以来、初めて2場所連続で優勝を逃した。大関日馬富士(28=伊勢ケ浜)の左上手投げで崩されると、土俵際の粘りもなくあっさりと土俵を割った。防戦一方での連続V逸について聞かれると「今場所も優勝できなかったということ。優勝というのは結果だけじゃなく、自然と転がってくるもの」と目を閉じたまま話した。

 取り直しで幕を開けた今場所は、尻上がりに調子を上げていた。だが前日の稀勢の里戦で立ち合いで変化したことで、勝利の女神は見放した。相撲協会には、朝青龍騒動以来の苦情メールが殺到した。「(14日目の相撲を)引きずることもあるだろう。だが昨日は昨日、今日は今日、明日は明日。引きずっていては22回の優勝はない」と力を込めたが、日馬富士の勢いは止められなかった。横綱審議委員会の鶴田委員長は「白鵬は体力的なピークは過ぎている。去年の力なら日馬富士に勝てている」と衰えを指摘した。

 初日、部屋での夕食時に宮城野親方(元前頭竹葉山)は「まわしをしっかり取って、自分の相撲を取ればいいんだ」とシンプルにアドバイスした。だが白鵬は「もう年ですから」と冗談半分に返事したという。史上最多となる9度目の全勝優勝を逃し「まだ早いってことなんでしょう」と成長途上であることを口にしながら、一方では「分からないけど、出来ない可能性もある」と珍しく後ろ向きな発言もあった。

 だが今場所は優勝こそ逃したものの、14連勝と地力を見せたのも事実。先場所骨折した左手人さし指は腫れが完全に引かず、初日に痛めた左ひじにはサポーター、さらに古傷の左足親指には今でも血豆が残る。

 致命傷になる大けがはないが、小さな故障が蓄積しながら横綱になってからの休場はゼロと奮闘する。「最後まで取り切るのが毎場所の目標。悔しいが、そういう意味では満足感はある」。白鵬時代が続くのか、それとも終わりが近いのか。秋場所、自らの結果で答えを出すしかない。【高橋悟史】