<大相撲九州場所>◇14日目◇24日◇福岡国際センター

 横綱白鵬(27=宮城野)が4場所ぶり、23回目の優勝を決めた。2差で追っていた旭天鵬(38)が負けたため、取組前に優勝は決まっていたが、大関鶴竜(27)を豪快な上手投げで転がした。九州場所は6年連続6回目の優勝。

 取組前に優勝が決まった白鵬は、土俵下で表情ひとつ変えなかった。久々の歓喜を内に秘め、鶴竜を豪快に仕留めた。13勝目で花を添えようやく息をついた。表情が崩れたのは支度部屋に戻ってからだ。「今まで(の優勝)とは全然違った。気持ちで参ったことはなかったし、いつかこういう日が来るんだと信じてやった。夢みたいと言ったらおおげさだけど、いいものです」。

 今場所は初日から、取組までのルーティンを変えた。最後の塩を取りに行く時、ゆったりと歩く。白鵬自身は「いろいろあるんだよ。普通だよ、普通」と言葉を濁す。だが先場所までは闘争心を表に出し2、3歩は小走りになったがその姿はない。

 場所前、九州場所のポスターをじっくり見つめた。そこには、生誕100年を迎えた35代横綱・双葉山の姿があった。土俵入りの姿を写した尊敬する大横綱に、自然と吸い寄せられた。「ゆったりしていても、力強さを感じさせる。肩の筋肉の盛り上がりもすごいし、目つきも鋭い」。先場所、日馬富士が横綱になった。闘争心に火がついた一方、自分を見つめ直す時間ができた。気持ちに振り回されず、自分を律する行動の1つが塩を取る時の歩きだ。

 場所後、徳島後援会から鳴門の渦を背景にした化粧まわしと、太刀が贈られるプランがある。太刀は奈良県桜井市の刀工・月山が作製する。角界に贈られるのは、若貴が横綱に昇進した時に寄贈して以来となる。貴乃花の時は銘に「不撓(ふとう)不屈」、若乃花の時は「堅忍不抜」と刻まれた。白鵬の銘にはシンプルに「心技体」と刻まれる予定だ。

 着替えを終えた後には「まだあと一番。千秋楽がありますから」と、3場所連続で黒星を喫している日馬富士戦へ切り替えた。かべを乗り越えさらに上のステージへ、白鵬は歩み続ける。【高橋悟史】