<大相撲九州場所>◇12日目◇20日◇福岡国際センター

 横綱白鵬(29=宮城野)は大関稀勢の里(28)を下して1敗をキープした。

 完勝だった。直前の一番で鶴竜が注文相撲で勝ったのとは対照的に、白鵬は強さを見せつけた。稀勢の里を上手投げで転がした。「まあ宣言通り、豪快でいい相撲を取れたんじゃないかな」。息も乱さず、余分な汗もかかずに、涼しい顔で1敗を守った。

 立ち合いから連続攻撃を仕掛けた。右から張り差しを決めると、左腕は「くの字」のように折り、もろ差しを狙った。差し切れなかったが、そこで瞬時に切り替え上手をつかんだ。ぶつかり合う直前には両腕が一瞬交差したが「いま思い出せば、大鵬親方のように(両腕を)クロスさせた、そんな感じだったかな」と、自己分析。“日本の父”と慕った恩師の攻め手を思い浮かべ、満足げに話した。

 その大鵬に並ぶ史上最多32度目優勝へ向けても「一番一番です」と気負いはない。並走する鶴竜との経験、実績の差は歴然で、残りは3日。偉業へ集中力を高めていく。【木村有三】