<大相撲初場所>◇2日目◇12日◇両国国技館

 東前頭筆頭の宝富士(27=伊勢ケ浜)が、横綱挑戦9戦目で初金星を挙げた。鶴竜(29)を力強い上手投げで破った。昨年九州場所でも2大関を撃破して自信を深め、今年の目標に掲げた「三役、三賞、金星」の1つを早々に達成。勢いに乗り、今日3日目は過去5戦全敗の白鵬に挑む。

 新年初めて、国技館に座布団が舞った。結びの一番で夢に見た光景を現実にしたのは、横綱挑戦9戦目の宝富士だ。欲しかった金星を初めてつかみ、自己最多26本の懸賞を受け取った。「素直にうれしかった」。こらえようとしても、花道では思わず顔がにやけた。

 強い思いが、土俵で結実した。鶴竜に立ち合いから突き起こされ、まわしも取られた。だが、左手で横綱の右手を押さえつけて切り離すと、すかさず得意の左四つに。前に攻め、右から投げつけた。「がむしゃらに前に出た。休んだらダメだと思ったんで」。自分の型で倒し「夢を見てるみたい」と感激した。

 元日、都内の部屋で新年会が開かれた。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の前で、各力士が今年の抱負を口にし、宝富士は「三役定着、三賞、金星」と宣言していた。早くも、その1つを達成し「自分でもびっくり」とおどけた。

 タレントのマツコ・デラックス似で、愛称は「パンダ」。兄弟子の日馬富士や安美錦に鍛えられ、昨年秋場所では稀勢の里を、九州では豪栄道、琴奨菊と大関を破り自信を深めた。穏やかな性格だが、勝負師としてのこだわりは持つ。正月3日、神奈川の出雲大社相模分祠(ぶんし)に初詣。おはらいは受けたが、おみくじは引かなかった。「おととし凶が出た。悪いのが出たら、気持ちが下がるじゃないですか」。テレビ番組の占いも画面に映れば必ず目をそらす。負の要素は排除し、新年に懸けていた。

 この日は、直前まで部屋の幕内勢が4連勝。昨年九州6日目以来の5人全勝の“トリ”も飾り「照ノ富士は大関に勝った。安美関は怪物(逸ノ城)に勝った。負けていられないと思った」。今日3日目は白鵬戦。「勢いに乗って勝ちたいです」。横綱連破なら、兄弟子の日馬富士にも最高の援護射撃になる。【木村有三】

 ◆宝富士大輔(たからふじ・だいすけ)1987年(昭62)2月18日、青森・北津軽郡中泊町生まれ。本名・杉山大輔。五所川原商から近大を経て09年初場所初土俵。11年名古屋で新入幕。通算241勝199敗、幕内通算129勝143敗。最高位は東前頭筆頭。趣味はカラオケ。得意は左四つ、寄り。家族は両親と弟、妹。185センチ、170キロ。