<大相撲初場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 史上最多33度目優勝を決めていた横綱白鵬(29=宮城野)が、10場所ぶり11度目の15戦全勝で偉業に花を添えた。モンゴルから来日中の両親の前で、横綱鶴竜(29)を寄り切りで下した。史上初の6場所すべてで全勝優勝も達成。18年ぶりの15日間満員御礼、大鵬超えの大記録で盛り上がった場所を、最後まで強さを見せつけて締めくくった。

 言いたかった言葉を、白鵬が満面の笑みで口にした。「大鵬親方に、33回目の優勝をしたことで、真の恩返しができたと思います」。優勝を決めた2日前は、大鵬超えの質問に「まだ終わってないから」と口を閉ざした。思いは胸に秘めた。残していた横綱対決に連勝して、やっと言えた。

 すべての力と技を使い尽くした。北の湖の47回を超えて史上最多となった48回目の千秋楽結びの一番。史上最多61本の懸賞が懸かる中、鶴竜を得意の右四つで受け止めた。左上手は伸びたが、相手の上手を切り、けたぐりで揺さぶった。最後は、なりふり構わず頭をつけて寄り切った。13年夏以来10場所ぶりの無傷15連勝に「久々の全勝が、こんなに大変かと思った」。史上初めて6場所すべてで全勝優勝を達成した。

 前人未到の33度目の優勝を成し遂げ、心に穴ができた。「この2日間いろいろ考えました。目標がなくなって、引退なのかなと…」。葛藤を抱きながら、頭に浮かんだのは07年横綱に昇進したころの思い出だった。「バカかと思われるかもしれないが、強い男の裏には賢い女性がいますから。横綱に上がった時に『精神一到』という言葉を教えてくれた奥さんに感謝したい」。紗代子夫人が考えてくれた言葉には「精神集中して1つのこと、相撲道を考えていけば、夢はかなう」という意味があった。

 大相撲史に大記録を刻んだ場所で、反省すべきところもあった。これより三役の入場時、支度部屋を出るのが遅れ、隠岐の海-碧山戦の最中に花道を歩いてきた。取組中に力士が入場すれば、土俵下の勝負審判にも悪影響を与える。角界の手本となるべき大横綱。「大鵬親方の大記録を数字では超えたかもしれないが、精神的なものはまだまだだと思うので頑張っていきたい」。これから進むべき道は、白鵬が誰より分かっているはずだ。【木村有三】

 ◆懸賞

 企業や後援団体が取組にかける賞金で1本6万2000円。勝ち力士は事務経費を除いた5万6700円を受け取るが納税充当金として2万6700円は相撲協会預かり。土俵上で渡されるのし袋は1つに現金3万円が入る。これまで上限を一番50本以内とし、過去最高本数は観客の投票で決まる「森永賞」を含めて06年秋場所千秋楽の朝青龍-白鵬戦の51本だった。だが、今回は希望が殺到したため、森永賞を含めて61本受け入れた。今後の上限の変更は未定。15日間の懸賞本数も昨年秋場所の1381本を上回る過去最多1625本となった。<白鵬が達成しそうな記録>

 ◆横綱最多勝

 現在607勝で歴代4位。同1位の北の湖は670勝で、残り63勝。

 ◆連続優勝

 現在5場所連続優勝中。歴代1位は白鵬と朝青龍の7場所。優勝を続ければ名古屋場所で新記録。

 ◆幕内勝利数

 現在801勝で歴代4位。同1位の魁皇は879勝で、残り78勝。

 ◆連勝

 現在24連勝中。歴代1位は双葉山の69連勝。勝ち続ければ名古屋場所千秋楽で並ぶ。