ノーヒットノーランを達成した中日大野雄(撮影・森本幸一)
ノーヒットノーランを達成した中日大野雄(撮影・森本幸一)

大野雄の投球は、どのチームが対戦しても簡単には打ち崩せなかった。計9奪三振のうち、6人までの打者にツーシーム系のボール球を空振りさせていたのは、MAX151キロのストレートと同じところから、同じ腕の振りとタイミングで変化させていたからだ。

大野雄の球威とキレを考えた場合、もっと詰まった当たりのフライが多く見られたはずだ。しかし、打球の内訳は、飛球(内野2、外野4)に対し、内野ゴロ(12)の方が多かった。いかに低めの球を見極めることが難しかったかということだろう。

もともとはパワーピッチャーで“ぶん投げ”のタイプだった。それが昨オフから今季にかけて、力任せからの脱皮を図った。なにも球速を抑えたわけではない。全ての球種を、右打者の外角、左打者の内角に安定的に配することができるようになったのが成長の証しといえる。

6回。捕手が加藤から大野奨に代わった際は、大野雄の投球に影響を及ぼすと思われたかもしれない。投手が受け手が交代するのを嫌うのは、捕手からサインを出されるタイミングが変わるからだ。大野雄の自信だろうか。安定した精神状態が投球に揺らぎを及ぼさなかった。

昨シーズン0勝に終わったことで、改心をはかったようだ。酒豪の男が、酒断ちもしたと伝え聞いている。おのれを変えて、投球も変わった。見事な126球だった。(日刊スポーツ評論家)

ノーヒットノーランを達成した大野雄(左)は捕手大野奨(中央)と抱き合い大喜び。右は高橋(撮影・前岡正明)
ノーヒットノーランを達成した大野雄(左)は捕手大野奨(中央)と抱き合い大喜び。右は高橋(撮影・前岡正明)