逆転した8回の日本ハムの攻撃は、先頭打者・西川の出塁が「すべて」だった。甲斐野の初球は、外角に手も足も出ないような154キロ直球。ここで西川は「何とかストレートを打つ」という意識ではなく、変化球に照準を合わせた。

直球をファウルにしながら「甘いフォークは前に飛ばしますよ」という姿勢。10球粘り、最後はストライクゾーンのフォークを右前に運んだ。真っすぐを打ちにいっていれば、フォークで簡単にやられていたことだろう。技術と考え方が生んだすばらしい安打。走力のある西川の出塁は、ソフトバンクバッテリーの意識も変える。あらためてリードオフマンとしての資質の高さを感じた。

3回4失点で降板した杉浦だが、調子は悪くなかったと思う。強力打線を相手にするには、内角球を使うことは必須。だが打者の近めに投げるには、強い球でなければならない。この日は最速147キロをマークしたのだが、先制された2回、柳田に打たれたのは内角141キロの直球。続く松田宣に打たれた内角ツーシームも139キロ。内角球は打者からすれば距離が取りづらいのだが、ボールが遅いとスイングが間に合ってしまう。内角へは「ていねいに」よりも「強いボールを」という意識を持ちたい。(日刊スポーツ評論家、侍ジャパン投手コーチ)

日本ハム先発の杉浦(撮影・黒川智章)
日本ハム先発の杉浦(撮影・黒川智章)