日本シリーズという短期決戦では、バッテリーとして相手に意識づけをすることが重要になる。特にマークするべき打者には初戦から仕掛けるべきだ。キーマンの打撃を崩すのか、それとも要所では勝負を避けて他の打者に回すのか。見極める判断材料にもなる。

ソフトバンクの千賀-甲斐は坂本勇に仕掛けた。初回、全6球で外角へのフォークの1球を除き、残る5球の直球を内角に投じた。内角にめっぽう強い打者に対し、あえて内角に集めて意識づけた。その後の打席は1打席目の残像が残ったような打ち方になった。

3回2死一、三塁で岡本への打席も同じだった。フルカウントから意表を突く内角直球で遊ゴロに打ち取った。初球から2球連続でフォークで空振りを奪い、岡本の頭もフォークで決めに来ると考えている中で、完全に裏をかいた。制球ミスすればリスクもあるコースに直球を投げて、仕掛けきった。CSファイナルで好調だった打者が、今後のシリーズで狂わされるかもしれない内容だった。

巨人の山口俊-小林も仕掛けよう、とはした。2回1死二塁。グラシアルに対し、外角スライダーで様子を見て、相手が得意なゾーンであることも分かった上で内角シュートで打ち取りにいった球だったと思う。完璧に制球したが、グラシアルが上をいき、2ランを運ばれた。打たれた後も仕掛け続ければ良かったのだが、その後はもう点を与えられない思いが強すぎて、無難な攻めに終始した。ソフトバンク打線に、特段の印象づけをできずに初戦は終わった。

まだ切り替えはできる。私も中日時代の04年の日本シリーズ西武戦で内角が打てないという事前情報だった和田に、徹底的に内角を打たれた。だが4戦目以降は逃げるのではなく徹底して外角変化球で攻めるという意識で、その後はある程度、抑えることができた。今の巨人はそういう切り替えができるチームでもある。(日刊スポーツ評論家)