SR初戦は、格下のオーストラリアを相手に大苦戦だった。私自身、アテネ五輪では全日本のユニホームを着てオーストラリアと戦い、予選と本戦で2連敗。絶対に力は日本の方が上だという自負があったが、手痛い敗戦を喫している相手で、当時の悔しい思いがよみがえってしまった。

リードされていた6回までの試合展開は、嫌な流れだった。別になめているわけではないだろうが、何か緊張感に欠ける戦いぶり。2回、先頭打者の鈴木がエラーで一塁に出ると、初球に盗塁を狙ってアウト。クイックが遅いとか、捕手の肩が弱いとか、けん制球が下手とか、それなりのデータがあったとしても、初めて出た走者。初球ぐらいはデータ通りかどうか、確認したいケース。スタートは良かったが、捕手のストライク送球で、あっさりアウトになってしまった。

先制点の取られ方も、2点目の取られ方も良くない。3回2死三塁、打順は1番打者。カウント1-2からいいところに落としたフォークボールを見逃してボール。この見逃し方を見て、山口のフォークをマークしているのだと感じたが、バッテリーは簡単にフォークを続けて中前適時打。見逃せばギリギリボールになりそうな低めのフォークだっただけに、狙い打たれた感じがした。打順も2巡目に入り、多投していた変化球をマークされているのに、4回2死から変化球を連打され、2点目も失った。

今試合を総括すると、今挙げたような反省点はあるが、これが国際大会の難しさだろう。今試合で登板したオーストラリアの投手は、何度も対戦していれば、攻略がそれほど難しい投手ではない。ただ、先発したルジッチは2メートルを超え、2番手で登板したモイランも、194センチの長身投手。しかも両投手ともサイドハンドの変則投手で、日本にはあまりいないタイプ。2打席目になって鈴木がソロを放ったが、打者の立場からすると、初めて対戦する投手というのは打ちにくいもの。それがあまり対戦したことがないタイプの投手であれば、なおさら厄介な存在になる。

ただ、焦らずに戦えば勝機は見えてくる。今大会に出ているチームは、韓国以外は、それほど投手力は良くない。勝ち越した8回は、まさに地力の差。2死からラッキーなポテンヒットで出塁すると、申告敬遠を含めて3連続四球で押し出し。実力で奪ったとは言い難い得点ではあるが、言い換えれば実力差の圧力で奪った得点とも言える。

ここまでの戦いぶりを見れば、総合力では日本がNO・1。今後戦う相手も、慣れていないレベルの高い日本人投手を相手にしなければいけない。国際大会が投手戦になりやすいのも、各国、慣れない投手と対戦するから。焦らずに粘り強く戦っていけば、必ず勝機が訪れる。初戦の苦戦を糧に、優勝を目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)