昨年、3連覇を逃した広島だが、セ・リーグ元王者らしいキャンプを送っている。なんといっても注目は遊撃手のレギュラー争い。昨季は打撃不振に陥り、不本意な成績に終わった田中広と、プロ入り2年目を迎えて順調に成長している小園の争いは、見ていても“熱さ”が伝わってきた。

シート打撃の内容を振り返ると、田中広が3打数1安打で、小園が2打数1本塁打の2四球。打撃の軍配は小園に上がるが、守備ではファインプレーなど安定感ある技術を披露した田中広に対し、小園は1失策。総合的には互角の内容だった。

田中広は手術した右膝の状態も良さそう。ただ、気になったのは打撃面。内角球への対応という弱点が改善されていない。内角に詰まりたくないのか、バットのヘッドの返しが早く、こねるようなスイング軌道になる。守備は堅実で、捕球時には常にグラブの近くに右手があり、打球の質や走者の走力によって落ち着いたプレーができていた。

一方の小園は、体がひと回り大きくなっている。打撃のパワーや身のこなしにも力強さを感じるようになった。守備面でも守備位置が変わった。高校時代や昨年は、かなり後方の深めに守り、勢いよく突っ込んでくる危なっかしいプレーが目立ったが、今年は定位置ぐらいになっていた。失策した打球は比較的強い当たりで、勢いよく出なくてもアウトにできた打球だった。まだ俊足のショートにありがちな“衝突キャッチ”になっていたが、改善していくような気がする。

個人的な意見だが、総合的な力が五分なら、田中広を起用した方がいい。田中広はまだ30歳で、衰えるような年齢ではない。レギュラーポジションは奪い取るもので、小園をレギュラーにするときは、全ての面で田中広を上回った時。その方が小園にとっても得るものが多く、息の長いスケールの大きな選手になるだろう。1軍メンバーの遊撃手は2人だけ。目の離せない争いだ。(日刊スポーツ評論家)