接戦を落とした日本ハムだが、沢村から得点を奪った8回の渡辺の左前適時打は、見事な内容だった。ロッテ移籍後の沢村は状態もよく、この日もしっかりと腕が振れ、それでいて適度に荒れており、攻略は難しいとみていた。

2死一、二塁。3球で簡単に追い込まれたが、ここから泥くさく食らい付いた。ストライクゾーンの速球をファウルで粘り、低めのフォークを見逃して、フルカウントまで持ち込んだ。好打者であれば、ここまでできる選手はいる。だが渡辺は最後、156キロの速球を左前に打ち返した。わずか2点差、試合の終盤という状況も加味し、「仕留める」ところまでいったことに、大きな価値がある。

開幕直後は苦しんだ時期もあり、スタメン落ちも経験した。だがシーズン終盤に入って成績を残せているのは、この日のような打席を過ごせているから。まだ好不調の波はあるが、もう「若手」ではなく「レギュラー」としての風格が出てきたと感じる。不調に陥ったときに、下を向いてしまう姿が気にはなるが、今後もこの日の一打を自信にしてプレーしていってほしいと思う。(日刊スポーツ評論家)