阪神-広島7回戦(甲子園)は激しい雨のため、降雨ノーゲームとなった。開幕から快進撃を続ける矢野阪神は、勢いを持続するために必要な要素とは何か?

85年日本一監督で日刊スポーツ客員評論家の吉田義男氏(87)が今後の戦い方を提言した。

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さすがに今の阪神でも雨には勝てない。突然のスコールで無観客の一戦はノーゲーム。伝説になっている85年日本一を上回るペースの快進撃は水入りになった。

1回表広島1死二塁、鈴木誠が二ゴロも一塁セーフ判定にリプレー検証を要求する矢野監督、結果はアウト(撮影・清水貴仁)
1回表広島1死二塁、鈴木誠が二ゴロも一塁セーフ判定にリプレー検証を要求する矢野監督、結果はアウト(撮影・清水貴仁)

吉田 必ず優勝争いに絡むと踏んでましたが、ここまでは想像以上です。開幕からずっと絶えず阪神ペースできましたからね。1回表1死二塁で鈴木誠の二ゴロも、わたしは同時とみたが、リクエストによってセーフからアウトに変わるわけです。優勝するときは“運”はつきものです。

当時のチーム20勝はシーズン34試合目だが、5試合早い到達。36年前は春先にBクラスに沈んだこともあったが、今季は開幕ダッシュに成功したままの戦いを続けている。

吉田 日本一の年より安定した戦いができてるんと違いますか。特に投手力についてはレベルが高い。伊藤将は球のキレもあったし雨が恨めしい。ただ打つほうはあの年のほうがサムライがそろってましたわ。チーム構成は違います。首位争いのチームに伊藤将、佐藤輝、中野と新人が3人も絡むのは珍しい。世代交代では佐藤輝の存在が相乗効果を生んでいます。またわたしはショートの固定がポイントと言い続けてきた。中野もどちらかというと打の選手ですが、まだ木浪と競争させたいですな。

昨季は開幕から巨人に悪夢の3連敗を喫したが、矢野監督勝負の3年目はヤクルトに3連勝スタートで弾みをつけた。

4月4日、中日戦の6回に勝ち越し打を放つ陽川尚将
4月4日、中日戦の6回に勝ち越し打を放つ陽川尚将

吉田 わたしがポイントになったとみているのはヤクルト、広島に続く中日との3連戦です。初戦に敗れた2戦目に9回2死から山本がサヨナラ打、3戦目はスタメン落ちした佐藤輝に代わった陽川が決勝打を放った。あの2試合の接戦を1対0、3対1でとったのはチームの大きな自信になったはずです。

しかし、ここからつまずいて下降線を描いていったペナントレースはいくらでもある。

吉田 週明けのヤクルト、DeNA戦は、今までとちょっと違った戦いになるかもしれませんな。とりこぼしはあきませんで。ヤクルトは山田がそこそこですが上がってきたし、村上もいる。個人的に塩見という選手は評価してます。ヤクルトも阪神に5連敗ですから、ちょっとは意地をみせんとね。神宮、横浜のビジターでの5戦ですが、ここで大きく勝ち越すようなことがあると、ぶっちぎりはオーバーかもしれませんが走る可能性もあります。

まだ100試合以上を残す長丁場。交流戦、五輪ブレークの節目もある。新外国人起用の当たり外れもチームの行方を左右する。

吉田 監督としては喜怒哀楽の感情を表に出さないことでしょうな。選手はよく指揮官を観察しているものです。1つの勝ちと負け、試合のなかの成功と失敗によって将が表情を変えれば、必ず選手の心は微妙に動きます。メンバーがそろってくると対抗馬は巨人以外にないと感じます。一戦必勝ですわ。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

4月30日、広島戦に勝利し両リーグ最速20勝到達の矢野耀大監督(中央)は選手を出迎える
4月30日、広島戦に勝利し両リーグ最速20勝到達の矢野耀大監督(中央)は選手を出迎える