優勝争いも佳境に入り、緊張感のある試合が続いている。これからの1カ月が本当の勝負。仮に「絶対に負けられない」という試合に負けても諦めてはいけないし、致命傷のミスをしても集中力を切らしてはいけない。そんな中、2位阪神と3位巨人の戦いはドローに終わった。両チームとも死力を尽くしたが、阪神には「もろさ」を感じた。

阪神の先発は西勇だった。序盤に3点を挙げ、そして迎えた3回裏だった。巨人は先頭の先発メルセデスに代打八百板を送って中前打。しかし続く吉川が初球、外角のシュートを打って投ゴロの併殺打だった。劣勢の巨人からすれば手痛い一打で、逆に阪神は「助けられたと思える凡打」だっただろう。しかし勝負事は「ホッとした瞬間」に“落とし穴”が待っている。

松原へ四球、坂本は左前打、そして岡本和には初球、ど真ん中のフォークを完璧に捉えられた。西勇は制球力で勝負する投手。それが松原に四球。坂本には内角のシュートで、それほど甘い球ではなかったが、カウントは2ストライクだった。失投といっていいだろう。岡本和の3ランも失投で、制球力で勝負しなければいけない投手がこの結果では話にならない。

あっさりと同点に追い付かれ、梅野も気落ちしたのかもしれない。丸に打たれた2ランは、内角へのスライダー。今の丸は外角の球を強く打てない状態で、第1打席で外角一辺倒でも抑えられている(中飛)。わざわざ内角を攻める必要はないし、仮に内角を攻めるなら速い真っすぐだろう。このイニングだけで、あっという間に5失点した。

9回裏の近本もプレッシャーがかかった。1死から右中間に飛んだ打球に対し、手を伸ばせば捕球できたが、大事にいこうとしてスルー(記録は二塁打)。さらに続く中前打に対し、本塁への送球は“高投”していた。自分のミスを取り返そうとして、低い送球を忘れてしまったのだろう。打者走者の岡本和は足が遅く二塁へはいけなかったが、こうしたミスに付け込まれないようにすることが、今後の戦いに向けて大事になる。

連覇している巨人にもミスはあるが、阪神に比べると緊張感のある試合に慣れている感じがある。「ミスをして集中力を切らさない」や、「窮地に追い込まれても諦めない」。毎年、優勝争いをしているチームのアドバンテージだろう。過酷な優勝争いは、間違いなくチームのレベルを上げる。諦めずに粘り強く戦っていく中で、阪神のチーム力も上がるはず。面白い優勝争いを期待している。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 3回裏巨人2死一塁、西勇は大城に右前打を打たれカバーに走る(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 3回裏巨人2死一塁、西勇は大城に右前打を打たれカバーに走る(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 3回裏巨人2死一塁、丸は右越え2点本塁打を放つ(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 3回裏巨人2死一塁、丸は右越え2点本塁打を放つ(撮影・加藤哉)