オリックスはこの引き分けで17日にもロッテ、楽天の結果次第でマジック4が点灯する。それを踏まえると、この引き分けは勝ちに等しい。ただし、残り試合が6試合という状況で、エース山本で勝てなかったという事実は大きい。どう受け止めるか。私は山本で勝てなかったその背景を、チームとしてしっかり振り返るべきだと感じた。

相手は最下位日本ハムとはいえ、チームは若手が主体。こういう状況での若手は本当に必死だ。オリックスも抜かりなく試合に入ったとは思うが、山本が5回まで無失点に抑え、当然のことだが打線には相当な重圧がかかっていた。

7回、そんなチームの硬さがプレーに出た。1死一塁で打席は安達。カウント3-2から一塁走者はスタートを切っており、ランエンドヒットがかかっていたが、安達は高めのボール球に手を出してファウル。見逃していれば1死一、二塁。ボール球に手を出したのは痛かった。安達は顔をしかめていたが、この1球は響いた。

安達は二ゴロ、来田は申告敬遠で2死一、二塁。代打大下という場面になるが、大下は1球もバットを振らずに見逃し三振。何を狙っているのか、大下の意図が感じられない打席となった。思い切りのいいスイングが魅力だけに、ベンチからすれば、この膠着(こうちゃく)状態を大下で動かしたいという思惑があったと思う。それを踏まえていたのか。どことなく、四球を念頭に置いた消極的な打席に見えた。

ここから先は優勝争いのまさに正念場になる。1試合を必勝で戦い抜くことになる。そのためには、7回に見せた安達の1球に対する選球眼、代打大下の打席に入る前の準備など、本当に細かい部分がチームの士気に大きく影響してくる。

山本はよく投げた。試合は無得点で推移していただけに、先に点を与えたくない意識が強まり、より細心の注意を払いながらのピッチングになり球数が増えたと感じた。これで通常ならば山本の次回登板は25日楽天戦が有力だ。ただし、中4日で西武、さらに中3日で楽天というギャンブルチャレンジも考えられる。優勝がかかるだけに、山本をどう起用するかも、中嶋監督の手腕にかかる。

まさに優勝への大詰め。1球たりとも気の抜けない厳しい戦いが続く。(日刊スポーツ評論家)

日本ハム対オリックス 7回表オリックス2死一、二塁、見逃し三振に終わる大下(撮影・佐藤翔太)
日本ハム対オリックス 7回表オリックス2死一、二塁、見逃し三振に終わる大下(撮影・佐藤翔太)