谷繁元信氏(50=日刊スポーツ評論家)が名勝負となっている今シリーズの「神戸決戦」を占った。

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シリーズ前にヤクルトの4勝3敗と予想し、3勝2敗で王手をかけた。だが第6戦でオリックスは山本が先発してくることを考えれば、まだ五分五分だと思う。第1戦の投球で考えると正直、状態はあまり良くはない。どこまで修正して本来の山本になっているか。でも本調子でなくても、ある程度、抑える力は持っている。

第5戦で起死回生の決勝弾を放ったジョーンズはDHで使いたくなる。ミスから同点3ランを浴び、サヨナラ負けしてもおかしくない流れだったが、崖っぷちのチームを救った。今季は代打での起用が多く、代打成功率4割2分9厘。切り札として残したい一方で、今の状態なら4打席あれば結果を出しそうだ。だが山本の先発時はとにかく守り重視で1点もやらないような野球になる。第6戦は代打に落ち着くだろう。第7戦まで回り、総力戦になれば吉田正を左翼に回してDHで起用するのも一手だ。

ヤクルトは打線でカギを握るのは山田だ。内容が良くなると相手が警戒し始める。そうなると走者を置いて村上に打席が回る。相乗効果が生まれてくる。

現に2打数1安打2四球で3度出塁した第4戦で、山田の圧が打線全体に波及したシーンがあった。オスナが決勝適時打を放った6回2死一、二塁。オリックス比嘉-若月のバッテリーは(1)スライダー(2)スライダー(3)カーブ(4)スライダー(5)スライダーと偏った配球になった。本当はどこかで直球を挟みたかったはずだが山田から圧が伝わり始め、どうしても球種が偏った。

第5戦の村上の2打席目の1発も外角一辺倒。1打席目は内角勝負で遊飛に打ち取ったが、回を追うにつれてどうしても点を与えたくない。長打が出にくい「遠く、低く」と基本に忠実に行きすぎたところを狙われた。山田の威圧感がもたらした部分もある。

救援陣は両軍ともに不安が残る。ヤクルトはマクガフが2度も9回にやられた。現状なら1点差ではなく、3点差ぐらいで最終回に持ち込みたい。第7戦になれば奥川が先発し、第2戦で完封した高橋もロングリリーフが可能で不安な救援陣をカバーできる。

オリックスは守護神平野佳がまだ登板1試合。最初は緊張感もあって制球が定まっていなかったが、1死後は平野佳らしいボールを投げていた。復帰した山岡も勝ちパターンにはめたい。ヒギンスとバルガスはもう使いづらい。第5戦でヒギンスが山田に打たれた同点3ランは2つの四球から。必要な四球もあるが、無駄な四球は完全に投手のミス。このシリーズはミスが出ても、すぐに誰かがカバーして敗因にあまりなっていないが、ここからは1つのミスが命取りになる。

ほっともっと神戸に戦いの場を移す。第5戦までドーム球場で戦い、屋外の寒さは両軍ともに影響する可能性は確かにある。だが経験則から言っても10年のロッテとの日本シリーズでマリンスタジアム(現ZOZOマリン)で試合前は寒くなると思ったが、いざゲームに入るとまったく気にならなかった。日本シリーズはそれぐらいアドレナリンが出る試合。名勝負にふさわしい結末を目にしたい。